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西田東「もろとも」(新書館/ディアプラスコミックス)

三浦しをんさんのエッセイ「三四郎はそれから門を出た」(感想はこちら)で取り上げられていた西田東さんの「もろとも」(新書館ディアプラスコミックス)を読みました!

もろとも

家庭も顧みない会社人間の勝にとって、子供のように邪気がなく、自分に接してくる天真爛漫な異母弟・幸男(ゆきお)の存在はちょっとしたオアシスだった…。
ある時、酔った勝は幸男のキスを受け入れてしまい…!?



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三浦しをんさんが他のエッセイや雑誌でも、何かとご紹介下さる西田東さん。

基本的に漫画は「好きな絵柄」でないと読む気にならない私。
このため一般・BL漫画ともに人がいくら「いい」作品とオススメしてくれても、表紙を見たとたんに「やっぱり、いいや」と手放してしまうことが多数あります。

食わず嫌いなのは分かっているのですが、「漫」ですよ?

なぜ読むのかって、もちろん絵とストーリー楽しみたいからじゃないですか!!

でも、しをんさんは言います。
「西田東作品を読んで、絶対損はない!」と。
(…ちょっと話作りました。すみません。)

あまりにしをんさんがあちこちで絶賛されるので、「そんなに言うなら、いっちょ読んでやろうじゃないの~~!!」ってな勢いで手に取った西田東さん。

ワン&オンリーな魅力が、そこには満ち溢れていました。


「もろとも」に対する、三浦しをんさんの言葉を引用します。

乾いたユーモアと切実な感情の表出がたまらぬ味わい。このひとの作品を読むと、自分が漫画になにを求めているのかが再確認できる。愛だ。恥ずかしいが、愛なのだ。ずるくて滑稽で純粋な愛情の形が、西田東の作品には確かに息づく。(「三四郎はそれから門をでた」より)



さすが!直木賞作家!!←しつこい
なんだか高尚です。

はじめて手に取った西田東さんの作品が「恋をしましょう」(竹書房)だったので、「西田さん=オヤジもの」だと思い込んでいましたが、この作品は登場人物が皆ですし、初めての方でもとっつき易いと思います。
収録されている作品も、バラエティに富んでいますし。

・表題作「もろとも」
 会社社長と詩人の異母弟…西田さんの兄弟モノに対する気持ちが窺える作品。純情で真っ直ぐな愛に感動します。
・「仁義ナシ!」
 お人よしな刑事とチンピラやくざ…こっちが攻なんだ!!って素直に驚き、オチに爆笑しました。 
・「聖なる男」
 聖職者と漂流ワイルド日本人…他の作家さんでは絶対描けない人物に、魂を持っていかれます。すごすぎる!!


西田さんの絵は、まあ端的に言うとあまり上手ではありません。
背景や小物の描き方なんて、「これで漫画家さんと言えるのか!?」と思うことしばしば…。すみません。
アシスタントさんはいないのかしらん。
ご本人もあとがきで、ご自分の画力のことをよくネタにされていますが…。
(でも、このあとがきがまた爆笑!必見です。)

でも、その絵柄がかもし出す「なんとも言えない画面の魅力」と「卓抜したストーリーのうまさ」にズドンとやられてしまいます。
そして、全編に漂う独特な笑いのセンス…。
読み進めるうちに、「この物語は、他の絵では良さが出ない」と思えて来る。
なんていうか、作品に「色気」があるのです。

これぞ西田マジック!!
そうなると、あとはその愛溢れる物語にどっぷりと浸かって楽しめばよし!です。

西田さんの作品は作中のモノローグにとても味わいがありますが、「もろとも」でよかったのは勝の母親の台詞。

私は結局 全部許すハメになるんだから



唐突に出てきた超マイペースなおっかさんにはびっくりしましたが、きっとこの一言を言わせたかったんですね。
この台詞があったから、勝は幸男と一緒に未来を歩く決心ができたのだと思います。
おっかさん、グッジョブ!!

勝の奥さんの洋子さんの言葉にも、夫婦ってどういうものかを考えさせる含蓄があって、うまいBL(ってか、西田さんのはメンズラブ!?)には女性が大切な要素だということも再認識しました。

いや~、しをんさん、さすがBLを読み漁っている尽くしているだけのことはある!
確かに読んで絶対損はない作家さんでした。

絵柄で尻込みしていた方も、ぜひおひとつ召し上がって見て下さい。
今までこのお味を知らなかったことを、きっと後悔なさいますよ。

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