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有吉京子「SWAN―白鳥―」全14巻(秋田文庫)

私の数少ないコミ友(漫画を貸し借りし合う大変貴重かつ重要な友人)Yちゃんが、「バレエ漫画って好き?」との言葉とともに、「SWAN白鳥―」(秋田文庫)全14巻をぽいっと貸してくれました。

「きゃ~!!なーつかしー!!」

小学校時代に通っていたピアノ教室においてあり、その華麗な絵柄に胸震わせながらページを繰っていたのを思いました。

お絵かきと言えば、もっぱら好きな漫画の登場人物を描いていた私が「再現不可能」と子供心に理解して、恐れ多くて真似することなんて出来なかった作品です。

Swan―白鳥 (3)
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有吉 京子
秋田書店
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20数年ぶりに読み返した「SWAN」。
あまりに面白くて、文庫全14巻を一晩で読んでしまいました!
(ちなみに文庫版の表紙を外すと、また別バージョンが楽しめます♪)
途中までしか(アメリカ編以前)読んでいなかったこと、そして子供の頃には気づかなかったあれこれが見えて来て「今」全巻を通して読めて本当によかったです。

有吉先生のバレエに対する真摯なまでの愛情、そしてその世界を完璧に表現する画力の素晴らしさに酔いました!


私が「SWAN」に関して覚えていたこと。

1・主人公の名前が「ますみ」だった。
2・ふわふわした感じの長い金髪の女の子が「体重をまったく感じさせない!!」とかって、リフトしたパートナーを驚愕させていた。
3・絵が大変きれいで美しかった。

…って、たったこれしか覚えてないよ!

華麗でロマンティックな絵柄に圧倒されるばかりで、子供時代はストーリーをまったく理解していなかったらしい私。
その頃からおばかさんです

まあ、まっさらな気持ちで作品に取り組めるのはいいことよ。

気を取り直して読み出してすぐに、ある作品との類似点が多いことに気づきました。

一人の平凡なバレエ好きの少女・聖真澄(ひじりますみ)が、優れた教師と出会い、素晴らしい仲間や先輩達とともに世界の舞台を目指してひたすら努力し、成長していく…。
そうか、「SWAN」はバレエ版「エースをねらえ!」だったのか。
さらに実在の人物が登場して、漫画を盛り立てるところも似てますね。

1976年から週間マーガレットで連載を開始し、5年かかって終了。
当然連載当初は小物やファッションにも70年代の感じが漂い、漫画の表現も当時の少女マンガ特有のレトロムードがいっぱいです。
登場人物の髪型もすっごい「くるくる」ですし、日本人には見えないし!
ですが、後半になるにつれ少女マンガ的な演出は抑えられ、大人の鑑賞を意識したかのような漫画になってきます。

ストーリーは真澄がバレリーナとして一人前に認められるまでの努力を描いた「コンクール編」、モダンバレエへの取り組みの苦労とパートナーと恋人の板ばさみに悩む「アメリカ編」、そして恋人と死別後、再び日本でクラシックバレエの世界に戻っていくまでを描いた「大人の恋編」に勝手にわけてみました。

「コンクール編」では真澄のあまりのラッキーガールぶりに「おいおい」と突っ込みを入れたくなること多数ですが、まあそれは少女マンガですから。

京極小夜子さん(≒お蝶婦人)や草壁飛翔(ひしょう)さん(≒藤堂さん)、柳沢葵さん(≒尾崎さんか千葉さん?)など日本期待の若手バレエダンサー、そしてセルゲイエフ先生(≒宗方コーチ)など素晴らしい指導者に恵まれ、バレリーナとしての才能を開花させていく真澄。
ラリサ(≒緑川蘭子)やリリアナなど、魅力的なライバルも登場し、コンクールでは思わず「日本人代表として頑張って!」と真澄を応援してしまいます。
で、天才少女リリアナ「奇跡のリフト」のシーンもここに!!

作品中有名な演目が多く登場するので、全くのバレエ初心者にはとても分かり易い入門書にもなっています。
また「同じ演目でも表現者によってこんなに変わるんだ~」、と有吉先生の卓抜した解釈にすっかり目からウロコ。

「森の詩」で草壁さんと真澄、葵さんの三人を上手くからませたところも、葵さんの「情念」みたいなものが伝わって来てとても好きなくだりです。

そして、はじめ体操選手として登場したレオンハルト…。
あなたにはすっかり騙されましたとも!!

続く「アメリカ編」では真澄ももうすっかりお年頃♪

ストーリーに恋愛のお話も絡んできます。
真澄は自らの欠点を克服し表現の幅を広げるべく、突如パートナー宣言をして来たレオンハルトと渡米し、まったく未知のモダンバレエの世界に飛び込みます。

ここで真澄のよき理解者であり、のちに恋人となるルシィが登場。
真澄は慣れない異国で一人モダンバレエにむきあい、さらにパートナーであるレオンとルシィとの恋の板ばさみに翻弄されることになります。

で、なににびっくりしたかっていうと、やはりしょっぱなのレオンとルシィの猛烈キスの再会シーン!!
他にも酔ったルシィがエドに迫ったり、シャワーシーンがあったりと、なんだか急に男性同士の絡みが増えてませんか??
あ、でも「コンクール編」にも葵さんの草壁さん押し倒しシーンがありましたね~。

ニジンスキー寓話」を読んだ時に感じていたBL感(ええ、そりゃもうそのまんまですから)は、もうすでにこの当時から有吉先生にあったんですね。

アメリカ編はモダンバレエが主軸となっているので、コンクール編のような流麗できらきら感あふれる画面は減ってしまいます。
モダンならではの「人間の肉体の美の表現」に重点を置いて描かれていますが、その絵がまた素晴らしい!

飛び散る
躍動する筋肉

見ているだけでアドレナリンが放出されます!

ルシィが行き詰ってボロボロになった真澄に「ボレロ」を自ら踊って見せるシーンでは、まるで画面から音楽が聞こえてくるようです。
ここで、あまりにも悲劇的なルシィの最後を誰が想像し得たでしょうか?
この生命あふれるダンスシーンがあったからこそ、ルシィというキャラが真澄の中に(そして私達の中に)、永遠に輝き続けるのだと思います。

そして、真澄がダンサーとしてさらに成長していく様を描いた「大人の恋編」。
「コンクール編」からさりげな~くにおっていた「セルゲイエフ先生ってもしかして…」の疑問がやっと明かされます!
これこそが大人の恋!大人の魅力!
「素敵です、先生~!(叫)」

そして再びクラシックバレエの世界に戻るので、有吉先生ならではのキラキラしい画面が復活するのもうれしいところ。
「インクと紙の白と黒のみ、トーンなし、手わざオンリー」で、こんなに叙情的で繊細な画面を描き出す有吉先生の技にはひたすらため息です。

天才と謳われつつも大きな秘密を抱えたリリアナとの対決を通して、ダンサーとしての新たな可能性への挑戦、敬愛して止まないセルゲイエフ先生との衝撃の事実、そして真澄のパートナーをめぐっての葵とレオンの関係を丁寧に描いています。


ここまで読んでくると、「SWAN」がただのスポ根ものでも、安易なシンデレラ物語でも、ましてバレエ賛歌だけのお話でないことも理解できます。
バレエを土台とした「人間の成長物語」として、作品を追っている自分に気づきました。

真澄だけでなく、主要な登場人物が全てそれぞれの悩みを抱えながら、ひたむきにバレエに取り組み、消化していく様子に、心を動かされます。
このあたりの機微は酸いも甘いも噛み分けた「大人」になってからでないと、絶対わかりません!

最後レオンと再びパートナーを組むことを誓って、真澄のさらなるダンサーとしての可能性を感じさせるところで物語は終わってしまいますが、やはりこれは「恋愛感情的」にもレオンを受け入れたって解釈していいんですよね??

連載終了時から最近まで「結局どうだったんだ」って意見が多かったようですが、二人の娘が主役の続編も出ましたし、疑う余地なしです。

さてとても魅力的で個性ある美形キャラが満載のこの作品で、誰が一番かと言われたら…私は「葵さん」をあげたいと思います。

セルゲイエフ先生の大人の魅力や、レオンハルトのクールさの裏に秘めた熱い情熱も捨てがたいのですが、真澄ひとりをひたすら思い続ける一途さはかえって男らしい!

さらさらの日本人離れした見事な金髪にもくらくらします。
王子様~!!(叫)」

でも、この方今なら「ヘタレキャラ」って言われちゃうんでしょうけど…。
当時、彼に肩入れして読んでいたファンは大勢いたと思いますよ。

SWAN」は、有吉先生のバレエにかける情熱と卓越した画力がなければ誕生しなかった漫画。
この作品が日本のバレエ界にもたらした影響はとても大きいと思います。
日本バレエ学校はまだ創立していませんが、続編「まいあMaia SWAN act II 1」が出たことでまた何が大きな変化が起こるかもしれませんね。
葵さんも出てくるらしいし、早くこっちもチェックしようっと!

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