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中村明日美子『ダブルミンツ』(EDGE COMIX)

明日美子さんが描き出す「黒」は、すごく艶っぽいですよね~。

ということで、中村明日美子さんの新刊『ダブルミンツ』(EDGE COMIX)を読みました!

ダブルミンツ(EDGE COMIX)ミツオとみつお、SとM、あるいは魂の共犯者。

出会った瞬間、壱河光夫は市川光央の“目”に殺された。同じ名前を持つ、二人の男たちの愛憎の向かう先は――?
『ダブルミンツ』のその後を描いた、描き下ろし『雨』を加え、話題の作品がついに単行本化!その他、短編『温室の果実』も同時収録。

【CONTENTS】
「ダブルミンツsecret1」「ダブルミンツsecret2」「ダブルミンツsecret3」「ダブルミンツsecret4」「ダブルミンツsecret final」「温室の果実」「雨」(描き下ろし)

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もともと黒と白で描かれるペン画が好きです。
マンガ好きな所以でもあります。

そして、世紀末芸術を専攻した過去があるほど、あの「耽美」と表現されるあたりの美術が好きです。

ですから、明日美子さんの初期作品も大好きです。

表紙のリボンタイに惹かれ、はじめて読んだ明日美子作品が『ばら色の頬のころ』でした。
そのまま引き込まれるように前作『Jの総て』を読み、そこでその作風にずっぽりハマって、残る総ての作品をむさぼり読みました。

『同級生』しか知らない方は、「ダブルミンツ」でこれでもかと登場するエロスとバイオレンスあふれる描写に、きっととまどったことと思います。

でも、その「ダークな明日美子さん」は、『同級生』とはまったくちがうテイストで、BLには欠かせない「純愛」を私達に描いて見せてくれました。



【ダブルミンツ】

彼は俺 俺は彼だ


壱河光夫(ミツオ)と市川光央(みつお)。
同じ響きの名前をもつ同級生の2人は高校時代、支配し、支配される関係にあった。

卒業後それぞれの道を歩いていた2人だか、ある夜「女を殺した」とのみつおの電話で、突然呼び出されるミツオ。

そこから再び、決して分かつことの出来ない2人の関係がはじまる…。

* * *

今回も、とても視線が印象的な作品でした。

そして、私にとっては近年稀に見る快作でした。

ドキドキしたり、ハラハラしたり、ゾクゾクしたり…。
読んでいて、こんな風に体に直接反応が出る作品は、そんなに出会うことはありません。

だから、読んだあとも長い間、記憶に留まって反芻してしまう。
読んでいて、昨年阿仁谷さんの『刺青の男』を読んだ時のような、不思議な高揚感がよみがえりました。

でも、読後はあの時ほどの絶望的で、どうしようもない虚無感に襲われたりはしなかった。


それはきっとこの作品では、みつお(黒髪) と ミツオ(ヒゲ)、2人の狂気にも似た愛し方を扱いながら、どこまでも純粋に相手を求めてやまない執着の果てに、彼らなりの幸せな姿をみることが出来たから。

第一話の出来がすごくいいと思ったのですが、あとがきに、最初は「読みきり」のつもりで描いたとあって、納得でした。

そこから話の裾野を大きく広げて、高校時代の"いじめ”にはじまった関係の中でさえ、ミツオは、みつおに対して狂おしいまでの性的な渇望と妄想を駆り立てていたこと。

数年後の再会の後は、くらい欲望を抱えたまま、ただ何も言わずに みつおに従うミツオの姿が描かれます。

みつおは、ミツオを「絶対的に支配する者」として描かれます。

が、裏社会に生きながら、その世界では何の力も持たないちっぽけな存在でしかない みつおにとって、「まるで犬みたい」に盲目的に従うミツオは、「自分が支配可能な存在」として、確かな価値があった。

それは、あくまで「ミツオを支配する立場」でいなければいけなかった みつおが、自分の一番見られたくない姿をミツオに見られたと知った瞬間に、それまでの自分を殺すことをいとわなかったほどに…。

だからこそ、その力関係のバランスが崩れたこの時、2人はそれまでの「支配し、支配される者」の関係から一歩進んで、共依存の関係になったのだと感じました。

社会に取り残され、「2人でひとり」という不完全な形の彼らは、ただ2人でいられればこそ、生きる価値があると思っている。

暗く、重い作品ですが、その2人の姿には、不思議な甘美さがありました。


同時収録【温室の果実】

政界の重鎮と呼ばれる老議員の歪んだ悦楽のために、デリヘルを呼び、求めに応じて体を開く姿を晒す議員秘書のお話。

短編ですが、この作品もとてもよく出来ています。

議員に秘めた想いを寄せる秘書の心理描写の繊細さや、抑えても嫌が上でも立ち上る色気がさすがです。

明日美子さんの描く黒髪メガネの優等生美人が大好きなので、しかもスーツ着てくれて、脱がされて、XXされたり、XXXされたり、だたもうそれだけでありがとう!って感じです。笑

ああ、もう、情緒がないなあ。汗

あっけらかんとしながら、秘書のことをよく理解して側にいてくれる、デリヘルのお兄さんもすごくよかった。

彼らには、これから時間をかけて少しずつ、心もつなげていって欲しいです。


【雨】描き下ろし

日本を捨て、新天地で新しい暮らしをはじめたみつお とミツオの、その後。

一般的な幸せとは遠くかけ離れた暮らしなのだろうけれど、ただ2人でいられればそれでいい、という覚悟が2人のやり取りから読み取れました。

不器用な彼らは、最後どこかで野垂れ死んだとしても、その時は一緒に、そしてともに笑っているような気がします。

この安寧のない行く末が同じ名を持つものの呪縛であっても、進んで受け入れたのですから。

1+1=1な2人。

きっと2人でいられる場所なら、この世のどこであろうと、パラダイスなのだろうと思いました。


…ところで。

作品を読んだあとで兄友のWカバーを見ました。

が、あのデザインはちょっともったいなかったんじゃないかと思う。

本編を読み終えて、その余韻を楽しみながらあのカバー下のイラストを覗いた方が…

2人の姿が心に染みたんじゃないかなあ。

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