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木原音瀬『COLD』シリーズ(ビーボーイノベルズ)

絶版だったうち2冊は中古で手に入れていて、新装版が発売されたのを機に(フェアに便乗して)やっと3冊そろえました。

今回もみゆさんにオススメ頂いたので、なんの予備知識も先入観ももたずに、読み始め(じゃないと木原作品に取りかかれないもので…。汗)、1冊目からすでに漂う「不幸の予感」に怯えつつ、3冊をほぼ一気読に読み上げました。

そして、この作品が多くのコノハラーから長い間支持されて来たことを、身をもって納得。

ということで、木原音瀬さんの「COLD」シリーズ(『COLD SLEEP』『COLD LIGHT』『COLD FEVER』/リブレ出版ビーボーイノベルズ)を読みました!

COLD SLEEP (ビーボーイノベルズ)事故で記憶をなくした高久透は、友達だと名乗る年上の男・藤島に引き取られる。藤島は極端に無口なうえ、透の「過去」を何ひとつ教えてくれず、透はどこにも居場所がないような寂しさを募らせる。しかし藤島とともに暮らすうち、彼の中に不器用な優しさを見いだして―。過去と現在が複雑に絡み合うあの超話題作の新装版がいよいよ登場!ショート番外編書き下ろし。



COLD LIGHT (ビーボーイノベルズ)透をかばって負った傷も癒え、藤島の退院の日がやってきた。再び二人の生活が始まり、恋人として暮らしたいと願う透だが、藤島は「君と恋愛するつもりはない」と拒絶する。透の記憶が戻れば今の関係を忘れられてしまうことだけでなく、過去の何かを藤島は恐れていて―。隠された縁が明らかになり、ますます盛り上がる新装版第2弾!ショート番外編書き下ろし。


COLD FEVER (ビーボーイノベルズ)ある朝目覚めた時、透の時間は六年の月日が経っていた―。事故でなくした記憶を取り戻したものの、周囲に愛されていた“もう一人の自分”の影に苦しみ、さらに誰よりも憎んでいた男・藤島と同居していたことに驚愕する。藤島に見守られ、失くしかけた夢と歳月を取り戻そうとする透だが、藤島の裏切りが明らかになり―。シリーズ新装版、ついに最終巻。同人誌発表作に大幅加筆し、「同窓会」シリーズも連動して同時完結。

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実は読んですぐ、興奮のままに一度感想を書いたのですが、なぜかまたまた記事の下書きが吹っ飛んでしまって、しばらく気落ちしてました…。涙

でも、読後時間がたってくるにつれ、2人の関係をちがった角度から見れるようになった気がします。

木原さん自身、3冊目(「COLD FEVER」)のために前作二つがあると仰っていますが、確かにその通りです。
出来れば3冊揃えてから、一気にこの世界に身を投じて欲しい。

新装版それぞれについていた描き下ろしもチェックしたので、改めて感想をあげてみたいと思います。


木原作品は「痛い」、か、「甘い」、か。

そのどちらかに偏る傾向が強いと思うのですが、この三部作はそのどちらをも究極の形で突きつけられます。

シリーズを読んだ直後は、これはどうしようもなく運命に翻弄される愛のお話だと思いました。

藤島を襲う過酷な運命にばかり目が行ってしまい、ただ彼に同情を感じていました。

でも、数日間ぐるぐるとこの物語を心で反芻していると、読後感が少しずつ変化しはじめました。

ひたすら透の暴力に耐えるだけの藤島の愛は、正しい形だったのだろうか。
それは、自分の贖罪のための、自己愛に過ぎないのではないだろうか。

とすれば、透の記憶喪失は2人にとっての「試練」などではなく、本当の意味で2人が結びつくために必要だった「神様からの贈り物」だったのではないだろうか。

消えてしまった6年間を一緒に過ごした「優しい透」の存在がなければ、彼らが心から必要としあう日々はきっと来なかったに違いない。

そして、その6年間の甘い思い出が無かったら、藤島は「本来の透」からの酷い仕打ちに、恐らく耐え切れなかったのではないだろうか。

だからこそ透は藤島の手のもとで、再度産まれなおす必要があったのだろう、と思えるようになりました。


「COLD SLEEP」では、交通事故ですべての記憶を失った透を、友人だと名乗る藤島が引き取って面倒を見始めるところから始まります。

透視点でストーリーが展開し、記憶を失ったあとの不安な精神状態と、藤島という男に対して抱く心情の変化が、丁寧に綴られてゆきます。

藤島がなぜ自分の面倒を見てくれるのかわからないまま一緒に暮らすうち、透は藤島の不器用な優しさを好ましく感じ始めます。

そして、彼が甘いものが好きなことを知ると、その喜ぶ顔を見たいがために、ケーキ屋でバイトをはじめ、果てはケーキ職人を目指そうし、とうとう藤島に恋をしていることを自覚します。

けれど、過去の自分を知るために藤島に黙って昔の知り合いに会ったことから、かつての自分に対する世間での評判を知ってとまどいを覚える透。

そして、ついに自分の起こした過失のために襲われた透をかばって藤島が大怪我をし、その後、自分の犯したあまりにも重大な過ちと、透を救うために藤島が取った、正義を捻じ曲げるほどの歪んだ愛を知るのです。

続く「COLD LIGHT」は、藤島視点で話が進みます。

透の気持ちを知りながら、そして、それを嬉しいと感じながら、素直に透を受け入れようとしない藤島の抱える過去の負い目が、回想という形で明かされます。

「いつか透の記憶が戻るかもしれない」、そして、「記憶を失くす前の透ならば、決して自分を許すことはないだろう」との思いから、透の求愛をこばむ藤島ですが、透の素直でストレートな愛情表現にほだされ、その閉じた心を少しずつ開放していきます。

ここで描かれる二人のラブラブぶり(特に透の完璧なまでの恋人ぶり)が、あとにつながるお話に、耐え難いほどの反動をもたらします。

その幸せに反比例するだろう“破壊の予感”は甘いばかりの二人の間にも確かに漂っていて、続きを読むのがすごく怖い。

でも、ここまで来たら、もう読む手は止まりません。
最後の「COLD FEVER」は、再び透視点で描かれます。

透はその冒頭で、突然記憶を取り戻します。
ただし、今度は藤島と暮らした6年間の記憶をすべて失って…。


つまり、最初の2冊はこの3冊目の序章にすぎず、この2人の関係がどういう結末を迎えるかを、読者はただの傍観者として、ハラハラしながら見守るしかなくなるわけです。

そして、彼らの行き着く先がどのようなものであろうと、読者としての気持ち(希望)はそっちのけで、なるようにしかならないと諦め、受け入れようとしている自分に気がつきます。

木原さんの書く物語には、そういう不思議で、絶対的な力のようなものがありますよね。

最初に旧版を読んだので、感想を書くにあたって、改めて新装版の描き下ろし部分を読みました。

「COLD LIGHT」での甘さたっぷりの描き下ろしには、その後の2人に訪れる現実を思うと、たまらなく胸が痛みましたし、「COLD FEVER」の描き下ろしでは、記憶を取り戻してからさらに時を経た透と藤島の様子を知ることが出来て、ほっと安堵しました。

そして、「同窓生」の2人と透が、こんなに親密になるとは思わなかったので、これには正直驚きました。

作中に登場するフレグランスの「LOVE&HATE」。
透が記憶を取り戻してから始めたカメラの世界で、初めて世に名を知らしめるきっかけになった商品です。
そして、実はその言葉こそが、この作品のテーマなんだろうと思います。

あとがきの木原さんの言葉に、「この2人が愛し合うことは考えたけれど、幸せになることは考えなかった」とありました。
ここに、この作品の深さ、そして面白さがあるのだと思います。

そして。

「記憶喪失」なんて遠い世界の話だと思っていた20代の頃、実は当時の勤め先に、階段から落ちたことをきっかけに、記憶を無くしてしまった先輩(男性)がいました。

他の部署の方だったので、直接お話しする機会はあまりなかった人ですが、伝え聞いたところによると、その人は自身のことはもちろん、家族のことも一切覚えておらず、実の妹さんについてさえ、「家に知らない若い女の人がいるのが不思議だ」と言ったそうです。

その言葉を聞いた時の、驚きと衝撃が今も忘れられません。

その人は事故のあと、性格もすっかり変ってしまい(大人しい感じの人が、とても明るくなった)、結局その後会社も辞めてしまい、今はどこでどのように暮らしているのか知るよしもありません。
きっと、全く新たな人生を歩んでいるのだろうと思います。

ただ、『COLD』シリーズを読んでいる間中、ずっと彼のことが脳裏に引っかかっておりました…。

今、生きて暮らしている人生なんて、本当はとても儚いものなのかもしれません。

その儚い人生を共に歩いてくだろう透と藤島は、長い年月をかけて、ようやくその手に幸せをつかんだのだと信じたいです。

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コメント

papicoさん今日和(^.^)
木原さん好きでこの3冊も読みました 3冊めを書く為の前の2冊とおっしゃるように
これはこのENDで良いのだと思うのですがなんか私の中で残るものがありました
それにしても木原さんは独特の世界感で惹かれますね♥
遅くなりましたがメルフォよりアドレス入れておきました<(_ _)>よろしくおねがいします。
ゆずはさん、こんばんは!
> それにしても木原さんは独特の世界感で惹かれますね♥
そうですね。もう有無を言わさない勢いがありますよね。
いま、怖いもの見たさで、ちょっとずつ挑戦中です。うふふふ。

> 遅くなりましたがメルフォよりアドレス入れておきました<(_ _)>よろしくおねがいします。
メールありがとうございます!ちゃんとお送り出来たでしょうか?
お愉しみ頂けると嬉しいです♪

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