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紺野キタ『日曜日に生まれた子供』(ミリオンコミックス)

引越し直後のドサクサに読んだ時も面白かったですが、改めて腰を据えて読み直したら、なおのこと面白かったです。

ということで実に4年ぶりの紺野キタさんのBL、『日曜日に生まれた子供』(ミリオンコミックス)を読みました!

日曜日に生まれた子供 (ミリオンコミックス 37 CRAFT SERIES 27)
君は拒めない 私は主人だから
ダーラム家の主ローランドの恋人は、父の跡を継いだ若き執事エリックだ。
けれど、ふたりの間には騒然たる身分の差異が存在しており・・・。
階上と階下、主と執事の恋を描いた表題作を始め、厳しい自然に暮らす森の住人、かつての教師と先生の秘密、
そして少女たちの密やかな時間を綴った紺野キタの珠玉の作品集。

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書店の平台でこの単行本を見つけたとき、紺野さんがBLで新刊を出していることにびっくりしてしまいました。
コミックス派なので、また「CRAFT」で描いていることさえ知りませんでしたから。汗

さらにご本人が仰るように、中身が「ボーイズラブ」というよりも「ミドルエイジラブ」だったので2度びっくり!
(というか、1つはそれさえも超えた「シルバーエイジラブ」というか…。)

BL界でも「オヤジ」流行の昨今ですが、紺野さんが描くとなんだか一味ちがうと感じてしまうのはさすがです。

主従、教師と教え子、ファンタジー、おまけに百合…(汗)と、バリエーション豊かな1冊。
中年BLは苦手と仰る方にも、必ず心の琴線に触れるモノがあると思いますよ。


【日曜日に生まれた子供】

あなたと私では立っている世界が違う


妻は浮気相手のもとに飛び出したっきり、一人息子とともに屋敷でひっそりと暮らす病弱で寝込みがちなダーラム家の主・ローランド。
持病の腰痛が悪化した父親のあとを継いで、新しくダーラム家の執事としてやってきたのは、無口だが忠実なエリックだった。

かつて一度だけ会話したことのある2人だったが、幼いエリックにとって、その時のことは忘れがたい記憶となって鮮明に残っていて…。

* * *

紺野さんの描く子どもは可愛いなあ。
ローランドの一粒種のジュリアンしかり、幼いエリックしかり。

と、それはともかく。

名家のご子息らしく、病弱で、素晴らしく“お花ちゃん”なご主人さまのローランドは、金髪輝く永遠のお坊ちゃま。
対して、秘めた想いを胸にかいがいしく主人の世話を焼く執事のエリックは、黒髪・黒スーツがストイックで、出生の秘密が影を落とす表情がローランドの前だとふと崩れる瞬間が実に魅力的です。

このお話は2人の出会い編、とでも言いましょうか…。

幼い頃に出会った「自分にとって特別な存在」の年かさの少年が、今は「自分の仕えるべき主」として目の前に存在するだなんて、なんと素晴らしい設定なのでしょう!

もう、それだけで萌えます

しかも、紺野さんの描く少年は本当に可愛らしいので、過去の2人の天使のような愛くるしさを愛でるとともに、成長後の2人の姿も堪能できるという一粒で二度美味しい構成には涙がでそう…。

幼いエリックにローランドがかける、マザーグースを引用した台詞もとても素敵で、2人の間に流れる空気もとてもやさしく、読んでいてとてもほっと出来るシーンです。

でも、前の主人に対して言い放つエリックの痛烈な皮肉が、自分への蔑みであることと同時に、エリックの生きてきたこれまでの人生を思い起こさせて、とても心が痛みます。

使用人としてあくまで慇懃な態度を崩さないエリックが、ローランドの何気ない一言に感情を揺り動かされるシーンの描写は何度見てもよいですね。

エリックは、ローランドの言葉を支えにきっとこれまでも生きてきたのだろうし、これからも生きていけるんだと思うと、こんな穏やかな時間がずっと2人の間を流れていくことを願わずにいられない、とても印象的なラストでした。


【オリーブの小枝 (前・後編)】

愛人のもとに行っていたはずのローランドの妻、アリスが突然屋敷に帰って来る。
華やかな彼女の登場によって、平穏なダーラム家は一転、たいそう賑やかになって…。

* * *

『日曜日に生まれた子供』の続編。

ここでの「急展開」に驚いた読者の方も多かったでしょうね~。

「そんな涼しい顔して 無理は禁物だなんて 君が言うの?」って…。

ギャー!!
ローランドったら!!
何たること!?

そんなことを耳元で囁かれて、エリックも可愛らしく頬を染めてるんじゃありませんッ!!汗

いやはや。

2人の間に何が起こってどうなって「そういう関係」になったのかが、ばっさり省かれているわけですから、びっくりです。

しかも、おそらく、読み返してみて気づいたんですが、ローランドはエリックにアルフレッド叔父の面影を重ねて…いませんか…?
突然「名前を呼んで」って頼むのも…う~ん、意味深…。

でも、それは単純に身分というものを意識したくなかったから…?
考えすぎ?

結局ローランドは、ただの“お花ちゃん”というわけではなかった、ということはよくわかりましたが。汗


そして、このお話はローランドの妻・アリスがとても重要な役割を担っています。

「家」同士の結婚が不満で家を出て行っただけで、決してローランドに愛が無いわけではないだろう彼女は、そういう意味で真のブルジョワジーであり、さすらいの愛の旅人。笑

そんな彼女が独白のように語る言葉の数々がとても印象的です。

けれど、アリスやローランドの学生時代からの友人が歓談する様子を見たエリックは、生きる社会の格差を痛感し、ローランドに自分とのことは遊びで構わないと告げてしまいます。

その言葉に少なからずショックを受けるローランド。
夕暮れ時に姿の見えなくなった主人を探しに行ったエリックはイブニングプリムローズの茂みの影で主の姿を見つけ出し、真摯な告白を受けます。

その後の堅物のエリックの赤面と、告白返しは見ものです!

もう、このおっさん(ローランドね)、突然魔性発動してホント怖いから!!笑

「結婚」という形にはこだわらない、でもだからと言ってそれが「自由」という訳では決してない。

これは、そんな時代を背景にして「本当に人を恋い慕うということ」を描いた物語なんだと思いました。


【森の郵便配達人】

森にいたいなら 
お前がここで必要とされる理由がなくては


大雪の日に、北風の裾にからまっていたのを森の番人に拾われた人間の捨て子は、森で生きていくために自分にしか出来ない仕事、郵便配達をしている。
ある日、森の綻びから森に入ってきてしまった人間の娘を見つけるが…。

* * *

北風と森の番人に拾われた人間の子どもと、彼を取り巻く森の精霊達とのお話です。
これぞファンタジ~。

厳しい自然と、そこに息づくあらゆるものに、紺野さんが感謝の気持ちを抱いていることが伝わってくるようです。

現世で必要とされなかった人の子と精霊達とのやり取りは、繰り返し読めば読むほどしみじみと心に染み入ってきます。

自分の居場所を与えてもらった人の子は、きっともうそこでしか生きられないと覚悟を決めたんだなあ。
でも、それが彼の選んだ幸せだったんだと思うと、やはり切ない気持ちになりますが。

ヤドリギがとてもいい味を出していて、物語のよいアクセントになっていますね。


【先生のとなり】

中年とはエロい生き物なんです


小学校の同窓会。
桜の木の下でかつての同級生たちが担任の平坂先生を囲むのを眺める嶋田。
かつては教師と教え子だった2人の関係は…。

* * *

キター!
(おそらく)60才超え!!

この年代は漫画では最年長じゃないですか?
でも、この先生、なんだか尋常じゃない色気が漂ってるんですけど…!?

自分、ストーリーさえはまれば案外どんなシチュエーションでもOKなので、オヤジものだって嫌いではありません。

でも、カーディガンのボタンを掛け違えてたり、立ち上がるときはナチュラルに「どっこらしょ」と口にし、水を飲もうとしたら口の端からタリ~~とこぼしちゃったり…。

まごうことなき「じーさん」の描写が妙~にリアルな平坂先生。

でも、そこがまたそそる!!
マニアの仲間入りを果たした気分です。笑

と、それはさておき。

何気なく交わされる2人の会話の回想シーンがすごく上手くて、自分も透明になってその場に立ち会っていたような気になります。

特に144ページのイラストは素敵すぎ

紺野さんて、そういうシーンでもふんわり上品なイラストが多いと思っていたので、こういった情念が感じられるような絵も描くんだ、と驚きました。

若い頃には情熱のままの感情に翻弄されたこともあっただろう2人が、長い時間を経て、なおともにその存在を慈しみ、思いやる姿にはしみじみ。

誰かに愛情を注いで生きていくことって素敵なことだと、再認識。

この作品は短編なんですが、羅川真里茂さんの『ニューヨーク・ニューヨーク』(白泉社文庫全2巻)やまんだ林檎さんの『コンプレックス』(全3巻)を読んだときのように、読後感がすごく心に染みました。


【いずこともなく】【昼下がりの…】

寄宿舎を舞台にした百合モノ・・・です。

こういう作品を読むと、つくづく自分はGLが苦手なんだと思い知るわけで。
これが男の子同士なら、いくらでもベタついてくれてOKなのにな。

なぜ男同士がOKで、女同士はだめなのか。
そのあたりの線引きが自分でもよくわからないので、いつも戸惑います。

って感想でもなんでもないな、こりゃ。
すみません。汗


【ねゆきの森】

森では私ひとりが いつだって急ぎ足だ


* * *

『森の郵便配達人』のその後。

森の精霊達と暮らしながら、明らかに異なる時間を生きている人の子。
しかし、いつか先立つ時が来ても、恐れることは何もないと寄り添う森の番人。

たった8ページに、彼らがこれまで過ごして来た長い、やさしさに満ちた時間が濃縮されています。
親に捨てられたこの子どもはその時点では不幸だったけれど、彼らと共に森に生きられた彼は間違いなく幸福だった。

悲しいんだけど不思議とふんわりとした読後感が味わえる、素敵な短編でした。

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さて、改めて読んでみて、この単行本の作品に共通するのは「時間の経過では変らないもの」だと思い至りました。
それはやはりBLの永遠のテーマ、「愛」というものなのかな。

それを声高にうたっているわけではないけれど、心にじっくり染み込んで気持ちをあたため続ける。
そんな作品を探している方には、ぜひオススメの1冊でした。

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