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三浦しをん『秘密の花園』(新潮社文庫)

三浦しをんさんの「秘密の花園」(新潮社文庫)を読みました!

秘密の花園
私は、なにをしているんだろう。どうしたら「私」でいられるんだろう?カトリック系女子高校に通う、三人の少女、那由多、淑子、翠。性格の異なる三人の「私」は、家族、学校、男たちの中にあって、それぞれが遠いはるかを、しずかに深く見つめている。「秘めごと」をかかえる彼女たちの微笑の裏側の自由。甘やかな痛みの底に眠る潔くも強靭な魂。自分を生き抜いていくために「私」が求めていたことは―。記念碑的青春小説。

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2002年にマガジンハウスからハードカバーで出た小説の文庫版です。

「秘密の花園」、といえば「禁断の」が枕詞ですが、舞台がカトリック系の女子高、しかも幼稚舎からのエスカレーター式のお嬢様学校(その名も聖フランチェスカ)となれば筋金入りです。

そこに通う那由多(なゆた)、淑子(としこ)、翠(すい)の少女期特有の感性を通して語られる透明で脆くも危うい日常が、三人それぞれの個性を表わすように異なる文体で描き出されます。

ただの感傷に流されない、少女の持つしたたかな強さ、が印象に残る作品でした。




何を隠そう、私も女子高出身である。
しかも、祖母・母・叔母・妹と一族の女子?がほとんど同じ女子高校出身なのだ。
まさに作中で淑子が言う「親子三代にわたってフランチェスカ卒業生です、とか、そういう人」。(普通の公立校だし、もちろん、学校の名前はこんな仰々しいものではない。)

当時(すでに約20年前!!)は確かに地元では名門、と言われていた。
田舎では数少ない進学校だったから、各学年の一割の生徒は当時全国的にもめずらしかった「中学浪人」をしてまで入学して来ていた。
受験シーズンには、それが是か非かが国会で論争にまでなっていた。

「名門だった」と過去形なのは、時代の波に押されて今や共学校になり、名前も変わって、現在どうなのかは知らないからだ。
新しい学校名が、「いかにも」(確かに校門前の桜並木は見事だったが、なんと“桜ヶ丘高校”という。)な感じで驚いたのと、愛着と言うほどの愛着はなかったが、やはり母校がなくなるというのは少しだけ淋しかった。

…この三人の物語を読んで、自分の自堕落で無気力な高校生活を思い出してしまった。

ともかく「目標」の高校に入学したことで、親も自分も満足し、その後の3年間は特に意義も意味も見出せずに過ごしてしまったから、本当にひどかった。
体重は3年で7キロ増えた。(大学入学後には元に戻った。)
高校の頃のことをなにか思い出そうとしても、いつも記憶があいまいで、途切れ途切れでしか思い出せない。

かろうじて購買部でお気に入りだった菓子パンと、選択していた美術クラスの先生の顔は覚えている。(美術部をアトリエにしている変わり者だった。)
それと、いつも数学では追試追試だった私に気安く答案を見せてくれた友人達も。(もちろん、2年からは私立文系コースを取り、理数系とは決別した。)
毎日ベルが鳴ると即効で家に帰り、「ベルばら」の再々放送に見入ることに至上の喜びを見出しているような私にも、友人はいたのだ。
そして、人生を変えた「JUNE」との出会い。(女子高だからね、やっぱ。笑)
朝、学校に行き、夕方部活もせずに帰ってくるだけの毎日だったけれど、確かに楽しかった。
同じ価値観の女の集団が居心地がいいと思っていた、最後の聖域だった。


女子高にはやはり独特の雰囲気がある、と思う。
自分がその輪の中にいた時は、露ほども感じなかったけれど、出てみるとわかる。

表面的には乾いて透明な膜で覆われているけれど、奥深くで湿り気を帯びた何かが、そっと発酵しているような…。
そんなものの集合体。

「秘密の花園」の三人は、それぞれ人に言えない「秘めごと」を抱えている。

那由多は、幼い頃男性に悪戯されたこと。
淑子は、学校の国語教師と交際していること。
翠は、説明できない感情を那由多に抱いていること。

きっと、私のいた高校にもこの三人はいたはずだ。

だけど、そんなことはおくびにも出さずに毎日急な坂を上って登校し、老教師の退屈な授業を受け、昼休みにはうわさ話に嬌声をあげ、放課後は古めかしい講堂の床を磨いていていたのだろう。

少女とは、胸に秘めごとを抱え、ガラス細工のようにもろそうに見えながらも、その実案外たくましいものなのだ。
だって少女も、まごうことなき「女性」、なのだから。

那由多も、自分を傷つけた対象に、本能のままに反旗を翻す。
淑子も、教師の不実に傷つきながらも十分な資金を用意してから、失踪する。
一番現実から遠いところで息づいているような翠でさえ、真っ赤な山茶花に、確かに「今」を見ている。

時に孤独に、時にたむろして、細い糸の上を危ういバランスで渡るような少女時代。
その無垢で、繊細な感性を時間は容赦なく奪う。


「秘密の花園」は、すべての女性がほんのつかの間だけ見せる幻のようなきらめきを、見事に切り取ってみせてくれた。

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