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依田沙江美「千の花―真夜中を駆けぬける2」(二見書房/シャレードコミックス)

依田沙江美さんの「千の花―真夜中を駆けぬける2」(二見書房/シャレードコミックス)を読みました!

千の花―真夜中を駆けぬける 2画家の勇気と編集者の昇の恋人関係は継続中。勇気にお見合い話が舞い込んできたり、昇にお気に入りの新人作家が現れたりと一方では相変わらずの喧々諤々ぶりだが、人の生き死にや出会いを経験することで、常に引き際を考えていた昇に心境の変化が現れる…。
運命でも約束でもなかった長い恋が結実する――。

■CONTENTS■
「ブラックボックス」COMIC Charade1999年2月号
「沈黙」COMIC Charade1999年6月号
「(JUST LIKE)STARTING OVER」COMIC Charade1999年10月号
「退屈な読書」 Charade2002年5月号
「千の花<全編>」Charade2002年7月号
「千の花<全編>」Charade2002年9月号
エピローグ:描き下ろし
(2003年1月初版発行)

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真夜中を駆けぬける」(二見書房/シャレードコミックス)の続編です。(感想はこちら

表紙を見て、その繊細ではかなげな二人のたたずまい、そのくせ芯のある昇の視線に釘付けになりました。
近いようで遠い、そんな距離感を感じたのが第一印象です。

人物の仕草や表情が、こんなにひとつひとつ細やかに表現されている作品を他に知りません。
当たり前の日常を通しての気持ちのゆれ動き、その気持ちに裏づけされた日々の行動…。
そんなものが淡々と描写されていきます。

でも、この作品の中で、昇と勇気の恋は確かに息づいていました。


表紙をよ~~く見てみると、タイトル「千の花」の下部に小さく―mille fiori―とのアルファベットが…。
“mille fiori(ミルフィオリ)”は、イタリア語で「千の花」という意味。 ミル(mille)は「千」で、フィオリ(fiori)は、「花」を意味するフィオーレ(fiore)の複数形です。

依田さんは作品のタイトルをつけるのが本当に上手だなあ、と感心します。
内容をさりげなく匂わせつつ、あからさまでない言葉の選び方にセンスを感じます。

BL作品には、時に噴飯モノのタイトルがなんと多いことか!!
それと、「なんでこういうタイトルなんだ???」と首を傾げたくなるものも…。
(実は私にとっては山田ユギさんと今市子さんのが、それにあたる。)

個人的に「タイトル付け」の東西両横綱は、よしながふみさんと西田東さんだと思っているのですが、依田さんもこの作品で大関に番付決定です!!
(実は他の作品は未読なのに…汗)

それはさておき。

一見はかなげな風貌ながら、柔軟にしたたかに世間を渡っていく昇。
また楽天的なようでいて、身のうちには赤々と燃え上がる炎のような情熱を秘めた勇気。

過去に恋人同士でありながら、一度別れを経験している二人。
久しぶりの再会で2度目の恋に落ち、浮気をしつつも昇のことは特別な存在だと感じている勇気。
真性のゲイである自分とは違って、女性との未来も考えられる勇気に対し、もう一歩踏み込んでいこうとしない昇。

前作の「真夜中を駆けぬける」に続いて、二人の日常のやり取りをこれでもかと丁寧に追っていき、そうすることで互いの心理の変化が読者に手に取るように伝わって来ます。

さらに依田さんの画風は、一見「可愛らしい」と表現するのがぴったりなのですが、その仕草やムードがえもいわれぬ色気をかもし出します。

何気ない仕草がとても丁寧に描かれているので、思わぬところではっとさせられたり。
例えば、勇気が指についているご飯粒をなめとっているシーン。
(それは昇の買ってきてくれた巻き寿司を食べているから。)
昇が口元についたソースを指先でぬぐうシーン。
(その昇を見て、ホテルの部屋を取りに行く勇気…うまい!)
そんなところに「萌え」を感じてしまうのです。


そして、依田さんの特徴でもある人の奥深い部分を覗き込むようにして紡ぎ出される叙情的なモノローグ。

愛は
自分の思考や存在とは 全く関係のないところで ずっと流れている
なぜそれに生かされるんだろう



「昇の独白はそのまま、すべての人間の独白になりうる。」
とは、三浦しをんさんが「シュミじゃないんだ」(新書館)の「純愛」をテーマにした第二章で「真夜中を駆けぬける」を取り上げているのですが、その追記として「千の花」に触れたくだりに書いている一文です。
この部分を読んで、「これはぜひに依田沙江美作品を読まねば!!」と思いました。

他にもとても心に残る素晴らしいモノローグがたくさんあるのですが、特に印象に残ったのは以下の一文。
何気ない日常のひとコマで昇に抱く、勇気の心情です。

なぜ自分がこの人に 恋してしまったかを
たまに せつない胸の痛みで 思い出す
やっぱりどこか 魂を分け合ってるみたいで…


う~む、すばらしい!!

親しいものの死や、一線を引いた情愛の無常さを感じたことをきっかけに、何者にも変えがたい存在として勇気を求める自分の気持ちに気づく昇。
愛することの喜びを知る反面、それを失うことの怖さも知っている二人がどんな未来を歩むのか…。
そこには細いながらも、真っ直ぐな一条の光が振り注いでいることを願わずにいられません。

ところで、この深遠かつ静謐さ漂う作品に対し、ひとつツっこみが許されるのなら…
勇気、あなたが「」なんだね!!爆


それにしてもくり返し、くり返し、この作品を何度読んでしまったことか!!
二人の仕事を通しての人間関係や事柄を、時に滑稽に、時にシリアスに描き出し、人が人を愛することの本質に迫っていく…。
この作品に出会えて、本当に良かった!!

何度も言ってしまいますが、今市子さんの作品のように面白さの説明が難しいのです!汗
未読の方は、ぜひ一度読んでみて下さい。

実は3月発売予定だった第3巻「美しく燃える森 真夜中を駆けぬける3」が発売延期で、いつになるのかヤキモキ。
(詳細は二見書房HPで。)

こうなったら、すんごい描き下ろしを期待しちゃいますよ!
ああ、早く読みたい~~!!

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コメント

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コメントありがとうございます♪
そうなんですよ~。2007年3月発売が延期になって、早1年たってしまうじゃないですか!!でも、他の作品も1年販売延期させたことがあるとHPで仰ってるので、次の3月には出してくださるのではないかと期待しております。ええ、心から。

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