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ヤマシタトモコ『薔薇の瞳は爆弾』(リブレ出版)

忘年会やら忘年会やらクリスマス会やらクリスマス会やら職場の大掃除やらで連日疲労困憊していて、サイン会の興奮が冷めないうちに更新したいと思っていながら、まんまと間が開いてしまいました…。
年末までカウントダウンがはじまって、あといくつ感想書けるかわかりませんが、とりあえずこれはあげておこう。

ということで、ヤマシタトモコさんの『薔薇の瞳は爆弾』(リブレ出版)を読みました~!

薔薇の瞳は爆弾 (ビーボーイコミックス)
趣味の悪いゲイ・見津田は王子様系(美形・爽やか・紳士)の蓮水から告白されてしまう。そんなバカな! <表題作> 想い人の残り香のせいで、切なくてたまらない。「好きだ」と告白してしまったから、あの人はもうこの部屋には来ないだろうか?<ラブる。> 重いテーマの読み切りを含め、それぞれの「その後」描き下ろし付き読みきり集!

■初出■
the turquoise morning/b-BOY Phoenix ⑫(’08年5月)掲載
さようならのお時間です。/MAGAZINE BExBOY(’08年5月号)掲載
ラブる。/MAGAZINE BExBOY(’08年3月号)掲載
浮気者!/BE・BOY GOLD(’08年6月号)掲載
薔薇の瞳は爆弾/BE・BOY GOLD(’08年2月号)掲載
嗚呼ボーイフレンド/BE・BOY GOLD(’08年4月号)掲載
絶望の庭/BE・BOY GOLD(’08年10月号)掲載
欲望の庭/描き下ろし
曲者!/描き下ろし
GoGoボーイフレンド/描き下ろし
Postscript/描き下ろし

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ヤマシタさんほど新刊が出るたびに話題になる作家さんもいない気がします。
しかも、各レヴューを見ていると「よかった!」と「ダメだった!」が両極端に混在…。

これはどういうことなのか?

それだけ注目を浴びていることは間違いないので、クリエイターとしては歓迎すべきことなのでしょうが。

とりあえずこの本のカバー折り返しで、ヤマシタさんが「B型」だったことが判明し、同じ血液型の人間として、これまでこの作風をあまり違和感なく受入れて来たことに対する理由を見つけた気がしました。(普段はほとんど血液型を気にするタイプではないのですが。)

「作家性が強い」「描きワケがイマイチ」など色んなことを言われているヤマシタ作品ですが、私にとっては本が出たらとにかく買う。そして読む。
その価値のある作家さんには違いないです。

もはや、「好き嫌いに関わらずこの人の作品だったらすべて読む」と位置づけているよしながふみさんと同等。笑

今回も「おバカテイスト」と「いかにも的な根暗BL」のふり幅が非常に幅広く、読者が翻弄される1冊だった…気がしないでもありませんが、読み手の「感性」に訴える短編集であったコトは否めませんでした!


【the turquoise morning】

フォトグラファーのジェドと、中東の兵士・サバーフ。
「死」をもってしか叶わなかった恋のお話です。

b-Boy Phoenix 12 アラブ特集 』に掲載の作品で、「アラブ」ってお題をヤマシタさんにふるリブレの勇気がすごい。笑
もちろん、石油王は出てきませんでした。←アラブもの読んだこと無いので勝手なイメージ。

私がアラブという言葉で連想するのは秋里和国弐さんの『Tomoi』(小学館文庫)。(これはBLじゃないですが)

トモイは死を求めてアフガニスタンに行きましたが、「the turquoise morning」で描かれたのはもっと純粋な“心のつながり”だった気がします。

「生」と「死」が真に隣あわせの世界。
そこでの「愛」がどれだけの価値を持つのか。
そのことを考えるに値する作品だったと思いました。


【さようならのお時間です。】

読み終えた時に口をついて出たのが、「サイアク!」のひと言だった。汗

でも、この先生(塾講)がかなり好みで、こんな先生がいきおい生徒に組み敷かれてるなんて~♪
「こりゃいいわ~」って、この作品の意図とまったく関係ないところに反応してしまってすみません…。

ずれた歯車が噛みあうことは無く、二人の距離はどんどん離れていってしまう。
宇宿(うすき)のように、今さら取り返しのつかない過ちを犯してしまったあと、どうやって償うべきなのかの手がかりさえも見えない。

読後のどうしようもない絶望感には、雨の日に路上に放り出されたような気分を味わいました…。


【ラブる。】

「ラブい」という言葉、どこまでもバカっぽいのにその稚拙さや滑稽さの中になんだか言い尽くせないものが詰まっていそうで素敵に感じてしまう。


とは、あとがきでのヤマシタさんのお言葉。
しかも、「いやなたとえをするなら「萌え」と同じように。」と続きます。

その「なんだか言い尽くせないもの」を求めて日々BLを読んでいます!と宣言したくなりましたが。笑

私としては「ラブい」=「愛しい」って意味だと認識していたのですが、あってますか?
じゃあ、「ラブる」=「愛する(愛し合う)」でいいのかな。

鼻水をたらし、涙にまみれて誰かを想う姿に、自分がとっくのとうにどこかに置き去りにして来た感情を揺り動かされたり、人間は一度嗅いだ“匂い”は一生忘ない、っていうようなコトを思い出したりしました。


【浮気者!】

ホラ 本気はおまえだけだし!


この台詞を本当に口にする男っているのでしょうか?
少なくとも私は会ったことないな。

さて、八方美人のいわゆる“ビッチ”なカレ・治人くん(基本ノンケ)と付き合っているゲイのユキオのお悩みは…。
というか、浮気するにはするなりの理由があるということを、こうまで赤裸々に打ち明けられたら納得するしかないのでは?笑

そしてもう後戻り出来ないだろうけど、浮気は甲斐性というので、きっとこれからも治人くんの態度は変わらないんじゃないかと心配なんですがそれは大きなお世話でしょうか。汗

ともかくめくるめく快感でもって、こっちの世界につなぎとめておいて下さい。笑


【薔薇の瞳は爆弾】

これは話がわかりやすくて、親しみ?がもてますよね。
収録作で一番人気があるの、わかります!

ヤマシタさんがキラキラした王子さまを目指して、「頑張って描いた感」が好感度高かったかと。笑

性的嗜好は肉体的なドM(美津田洋平)が出てきますが、これまたメンタル的にはS属性っぽい受けだったり…。
そして、ロン毛、さらにヒゲ、加えて目つきは悪く、腕っぷしは強いです。

で、そのお相手が昔話の王子様のように絵に描いた様な美青年の蓮水景(はすみ・けい)。
そこにいるだけで、漂うかぐわしい体臭、背景には常に薔薇を背負い、性格はあくまでもおっとりと…。
ただにっこり微笑むだけで、キューピッドの矢が周囲の人々に雨あられのように降りかかります。

このちやほやされることに慣れながらも違和感を感じている攻めが、外見だけでなく「本当の自分=中身」に興味を示してくれた受けに一目惚れ。

その組み合わせが面白すぎます!!

蓮水はキラキラ王子ならではの直球の告白で美津田のハートを射止めますが、告白シーンで薔薇が散る演出を数十年ぶりに見た気がする。笑

そんなことでM心をくすぐられてしまうのかと、常人には計り知れない“ドMの心理”が興味深かったです。


【嗚呼ボーイフレンド】

でた!これぞ全編ヤマシタ節!!笑

ヤマシタさんお得意の「おネガ」なキャラが登場しますが、心情がだだ漏れなだけになんだか憎めません。七瀬にでもなった気分が味わえます。
(ちなみに、「電車の中にエスパーがいたらどうしよう…」っていうのは私もいつも警戒しています。いたところで、どうにも対処はできませんが。)

攻めの脳内妄想実況のモノローグと、二人(名無しです)の台詞だけで話が進んでいきますが、この中では一番ノーマルなBLっぽい。
と思ってしまったのは私だけでしょうか?汗


【絶望の庭】

ヤマシタさんのロマンティックの定義って…、とあとがきを読んで思ってみた。笑

なんだか映画っぽい作品です。
静かな空気が全編に漂っていて、それ自体珍しいと思ったのですが、なるほどこれがヤマシタ的なロマンなのか。

自分を愛してくれるパートナーがいながら、他の人を想い続け、結果自分の気持ちを偽り続けることに絶望している主人公。
かなわないと知りながらも相手を求めることを諦めきれずに泣いている姿に、人間くささを感じてよかった。
きっと真実は知っているかもしれないパートナーの、あっけらかんとした強さに救われました。

で。
作中に出てくる映画について、名前は聞いたことありますが、きっと一生見ることはないと思います…。汗


【描き下ろし色々】

各カップルたちのその後。
今回も!小技でいろいろと笑わせてくれました。

一番ほっとしたのは「欲望の庭」。
日常のささいな言動に、「あるある!」とうなづきつつ、幸せってささやかなことだよな、と思いました。


【ペーパー】
東京漫画社『恋の話がしたい』(感想はこちら)とのコラボペーパーでは、彼ら皆はご近所さんだったのね、と。笑
でも、今や○いの師匠Hちゃんにヤマシタ作品レンタル中で、前回のペーパーの中身ほとんど飛んでます!汗

でも、裏面のリブ編さんのお言葉。
「萌えって女の子にとってすごく大切なモノ(以下略)」には、すでに“女の子”というくくりから遠く離れてしまった世代としてはヤマシタさんの驚きに素直にうなずけてしまいましたが…。
それじゃダメなんですかね?滝汗


さて今回も非常にヤマシタ的な1冊でしたが、読み返すときは気分にあわせて、を合言葉に次作を楽しみにしたいと思います。
来年も衰えをしらないこのパワーで突き進んでいって欲しいです!

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