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英田サキ『デコイ 囮鳥』『デコイ 迷鳥』(シャイノベルズ)

『エス』シリーズ4冊に引き続き、『デコイ』シリーズ上下巻も一気にいきました。

ということで、英田サキさん[イラスト:奈良千春さん]の『デコイ 囮鳥』、『デコイ 迷鳥』(大洋図書/SHY NOVELS)を読みました!

デコイ 囮鳥 (SHY NOVELS 207)
『デコイ 囮鳥』(上巻)
「あんたにとって、俺はなんなんだ?」
銃を手に意識を取り戻したとき、安見亨はそれまでの記憶をすべて失っていた。俺は誰だ?この銃は・・・?自分に怯える安見に名前を教え、優しく、けれど得たいの知れない闇を感じさせる男、火野。一方で高仁会元会長の殺人事件をめぐり、ある男たちが呼び出されていた。関東侠和会に属する那岐と加賀谷だ。交錯する過去と現在。そして、因縁。男たちの闘いが始まる!!

デコイ 迷鳥 (SHY NOVELS 209)
『デコイ 迷鳥』(下巻)
「俺はお前を信じてる。 お前は俺を裏切ったりしねぇよな?」
関東侠和会の那岐には誰にも言っていない過去があった。それがある高仁会元会長の殺人犯を探す最中、過去の亡霊ともいえる男と再び顔を合わせることに・・・。一方、記憶を失っていた安見は、自分の上司と名乗る男と会い、思いがけない事実に戸惑っていた。自分には火野が必要だ。火野がいなくてはならない。しかし、その関係は偽りのものだった!?裏切りと真実。希望と絶望。縺れ合う憎悪と愛情。そして絆。男たちの想いの行方は・・・!!

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こちらも、まだ未読と仰る方がいたら、ぜひ一気読みをおススメしたいです。
って、やっぱりそんな方はマレでしょうが。汗


こちらのシリーズの方が『エス』よりもエンターテイメント性が増していて、面白かったです!
ミステリーっぽい進行で、「これからこうなるかな」と思うと結構その通りになったりして、自分の読みが当たっていくのが嬉しかったりもしました。笑
さらに文章がぐっと読みやすくなっていた気がしたのは、気のせい…?

交叉する過去と現在。
真実と裏切り。憎悪と愛情。
そして14年を経て再び絡み合う因縁の関係…。

まだ未読の方は、是非あらすじなどは知らないままに読んで欲しい。
愛憎の果てに衝撃の結末が待っています!


『エス』のスピンオフということで、あれから2年後の宗近や椎葉もさらっと(ホントにさらっと…)登場してくれていたのが嬉しかったです。
そして、佐藤さん(仮名)は、なんというか、哀愁が増していた。笑
で、マスターにはすっかり騙されましたよ。

謎の多い男・火野と、転落事故により記憶を失った安見。
関東侠和会に属するヤクザである那岐と加賀谷。

2つのカップルの物語がほぼ同時進行で進みながら、14年前に起こった爆破事件を接点として互いに絡み合い、その絡んだ糸が徐々に解かれていく…。

その辺りの構成の上手さが抜きん出ていました。
この物語を2冊に納めてしまったところに、英田さんの力量を感じます。

ただ、やっぱり“英田節”…というか、ハードかつダークな面が全面に出てくるので、好きな人には堪らないテイストでしょうが、BLを愛あふれるファンタジーと定義している方には、ちょっと立ち寄りがたい感があるのは否めないかも。

私はJUNE世代なので、こういったテイストは嫌いではないですが。
(英田さんがJUNE末期の作家さんと知って、納得でした。)

『囮鳥』冒頭から過去の記憶を一切失った安見の視点で物語が語られ出すので、ちょっと推理小説のような感じです。安見と火野の関係がなかなか見えて来なかったのも、余計な予備知識を持たずに読み出した私にとっては、物語に引き込まれるいい導入となりました。

均整の取れた体躯に、まれに見る美形。
その容貌からは冷たい印象を与えながら、安見に対してとても愛情に満ちた態度を取る火野。
奈良さんのイラストの素晴らしさも手伝って、火野という男の持つ怪しさと魅力が、不思議な迫力で迫ってきます。

で、この二人が便宜上のAカップル。笑

もう一方のBカップルと英田さんと担当さんから呼ばれていたヤクザの二人組みが、宗近の元部下であった那岐と加賀谷です。(宗近引退後、その地位を那岐が継いでいます。)

この腹心である加賀谷が、那岐に対して一方的に想いを寄せているわけなのですが、那岐にとって一番大事な相棒で誰より信頼する相手でありながら、過去のトラウマのせいでその想いを受入れられずにいるという設定。

眼鏡が渋いオールバックでいかにもヤクザという風貌。
さらに非の打ち所の無い有能な男が、相棒への切ない片思いに心揺れてるだなんて…。

なんて美味しすぎ!!
加賀谷ファンが多いのもうなずけますよ!(含む私)笑

『囮鳥』でこの二組の関係をそれぞれ丁寧に描いていって、14年前に起こった爆破事件を火野と那岐、安見3人の接点とし、後半の『迷鳥』で事件の謎解きをしながら物語は一気にクライマックスへ向かいます。

そこで那岐と火野の繋がりが明かされ、壮絶な生い立ちを背景にした二人の過去がはっきりすることで、那岐が過去を消し去りたがった理由も明らかになります。

那岐と火野の組みあわせは、これはこれで非常に萌える設定で、冷徹な火野が見せる、那岐に寄せる特別な想いが非常に切なくて胸が痛みました。
(そもそもが生い立ちものに弱い…)

殺人を生きる糧として来た男が、自分の人生の中で唯一固執して来た存在である那岐。
きっと、過去という名の鳥籠から那岐を解き放つことが、火野にとっての精一杯の愛情表現だったんだと思うのです。

それだけに、那岐が火野との過去を振り切って初めて加賀谷を受入れるくだりは、那岐の誘い受けが超弩級にエロい上、加賀谷の万感の思いも伝わって来て、感無量!
奈良さんのイラストの素晴らしさも加わって、非常によかったです~♪

『迷鳥』の表紙の人相の悪…いえ、目つきの悪い(フォロー失敗)この二人が、こんな甘甘カップルになるなんて~!
だからBLはやめられません。笑

そして、この二人とはあまりに対照的だったのが火野と安見の二人。
記憶を取り戻しても火野の側を離れられず、自ら親の仇である火野と共に生きる運命を選んだ安見に、本当の幸せが訪れることは永遠にないのではと思われて、暗たんたる思いに捉われます。

私怨から自らも殺人を犯した安見にとっては、愛と憎しみという相反する感情の狭間で、火野と共にあることを自らの贖罪としようとしたのでしょうか。
火野と那岐の関係が明かされてから、その存在感が少し弱まってしまった感のある安見ですが、『囮鳥』と『迷鳥』のタイトルが示すように、真の主役は彼であったような気がしてなりません。

爆破事件後、15年が経過し、実行犯であった火野と那岐は時効を迎えて自由を得ました。
でも、犯した罪は永遠に消えることはなく、その意識を胸に刻みつけて生きて行って欲しい。
このシリーズだけが、『エス』や『DEADLOCK』シリーズのように、安らかなラストではなかった理由はそこにあるんだと思うのです。

それにしても。

時効直前にして大事件の犯人逮捕に失敗し、同時に大切な部下をも失うことになってしまった佐藤さん(仮名)。
今回あまりに酷い扱いではないでしょうか??

お願い!
誰か、佐藤さん(仮名)を幸せにしてあげて下さい!←やっぱ英田さん?笑

もし、さらなる続編が可能なら、今度はぜひ佐藤さん(仮名)で1冊お願いしたいと切に願います!

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コメント

読了、お疲れ様です~♪
おはようございます♪

とうとう『エス』~『デコイ』まで一気達成ですね!
通し終わった時の読了感は、きっと格別だろうなぁと思います。
私、『エス』は同時進行だったので、それこそ最初はシリーズ化になるかどうかも判らなかったですし、もう‘裂罅’から‘残光’までの焦らしプレイときたら…(泪)
なので、『デコイ』は2巻揃うまで、我慢しました!

『デコイ』の、あの甘やかなラシトシーン、加賀谷の為に嬉しくてなりませんでしたよ。
でも、私には、どうしても火野と那岐の物語の途中にしか読めないんですよねぇ…だから、この後が心配で心配で…
加賀谷は、どういう事になっても、彼自身は揺らぐ事はないと思うんですけど、やっぱり安見が…不憫な事にならなきゃ良いなぁ、と…

で、佐藤(仮)さんなんですが…実際、佐藤(仮)さんメイン作品の要望は、高いようです。読者からも、編集からも。
当然といえば当然で、私も佐藤(仮)さんの幸福を切に願うものですよ。
ただ、私にとって佐藤(仮)さんは、‘秘すれば花’かも…

忘れないうちに、‘交渉人’との連動全サ、申し込まないと♪
季菜子さま、こんばんは♪
おかげ様で読みきりました~!物語の世界にどっぷり浸かり、非常に愉しく幸せな時間を過ごしました♪
>もう‘裂罅’から‘残光’までの焦らしプレイときたら…(泪)
それはさぞやお辛かったですね~(^_^;)一気読みの達成感はやるとクセになりますよね!
>やっぱり安見が…不憫な事にならなきゃ良いなぁ、と…
いやはや、本当に…。それだけが気がかりで。那岐をあきらめ?心機一転した火野と二人で、新たな道をしっかり歩いていって欲しいと切に願うばかりです。でもなあ、きっと難しいですよね~。ハァ…(溜息)
>佐藤(仮)さんメイン作品の要望は、高いようです
あ、やっぱり?皆考えることはいっしょなんですね笑。
>私にとって佐藤(仮)さんは、‘秘すれば花’かも…
そのお気持ちもわかります~。思いは胸に秘めたまま、そっと陰から見守るだけの義兄。いいですよね!そして、その思いは墓場まで(以下略)。妄想しがいがある佐藤(仮)さん、素敵すぎです♪
>‘交渉人’との連動全サ
私も忘れないようにしないと~♪「交渉人」シリーズもただ今密林に発注中です。今月はなんだか“BL小説積読消化月間”になりそうです(^_^;)

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