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英田サキ『エス』シリーズ(シャイノベルズ)

まだ未読の方がいたら、これはぜひ一気読みをおススメします!

ということで、英田サキさん[イラスト:奈良千春さん]の『エス』シリーズ(大洋図書/シャイノベルズ)を読みました!

エス (SHYノベルス)
『エス』
「俺のものになれよ」
「俺に警察の犬になれってか?」
警視庁組織犯罪対策第五課、通称「組対5課」の刑事である椎葉は、拳銃の密売情報を得る、言わば拳銃押収のスペシャリストだ。その捜査方法はエス(スパイ)と呼ばれる協力者を使った情報収集活動に重点がおかれている。椎葉は新宿の武闘派暴力団・松倉組に籍をおく男を情報提供者として工作している。ある日、寝起きの椎葉に一本の不明な電話がかかってくる。おまえのエスに気をつけろ、と。劣情と矜持、孤独が交錯する男たちの物語。


エス 咬痕 (SHYノベルス 133)
『エス 咬痕』
―どこまで身体を開けばいい?どこまで心を許せばいい?―
ある日、大物ヤクザである宗近をエスとし、自分の身体を餌に情報を得る椎葉に、上司からの命令が下った。それは同僚の刑事である永倉の援護をするというものだった!刑事とエス。それは運命を共有する関係でありながら、決して相容れない存在でもある。英田サキが贈る孤独に生きる男達の歪で鮮烈な愛の物語。


エス 裂罅(れっか) (SHYノベルス)
『エス 裂罅』
「明日、この命が尽きるとしたら何をしたい? 何がしたい?」
大物ヤクザでありながら椎葉のエスである宗近。宗近に特別な感情を持っていることを意識しつつも、刑事というポジションを選んだ椎葉。互いを想いながらも、ふたりはエスと刑事という関係を守ることを誓っていた。そんなある日、椎葉の前に現れた謎の青年・クロによって、すべてが狂い始める!罪と罰。そして、贖われるべきものとは。


エス 残光 (SHYノベルス170)
『エス 残光』
「誓えよ、エスじゃなくひとりの男としての俺に誓え。俺を裏切らないと。俺を愛していると。」
大物ヤクザであり椎葉のエスでもある宗近が何者かの銃によって倒れた。宗近を守るため、ある決意のもと宗近から離れた椎葉は、五堂によって深い闇を知る。複雑に絡まり合う過去と因縁。錯綜する憎しみと愛。奪われた者は何で憎しみを忘れ、奪った者は何で赦しを得るのか。この闘いに意味はあるのか?闇の中でもがき続けた男たちの鎮魂曲!

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一気読みをおススメしてみたところで、このブログにいらして下さる方で、まだこの作品を読んでいない人はきっといらっしゃいませんよね。
アハハハハ~。

と、BL読みとしては絶対外せないだろうこのシリーズ。
ようやっと読み終えました~!

「いつか読まねば」との思いがずっと心のどこかにあったので、ようやく読み終えることが出来て、大きな宿題をやり終えた気分です。
爽快~!笑

そして、やはり読んでよかった。

対極にあるものが互いに近づき、反発しながらも惹かれあう。
男たちが抱える葛藤と、その鮮烈な生き様に心震えました!


あまりにも有名で評価の高い作品ですので、今さらくどくどと申し上げることはございませんが…。
せっかくなので、言わせてください。

刑事とヤクザという鉄板のカップリング。
そして、その二人が結ぶ「刑事」と「エス」という究極の絆。

このシチュエーションで面白くならないハズが無い。
鋭く、深い観察眼でもって裏社会の側面を描き出す英田さんの手腕がお見事です。
さらに、英田さん特有の男性的で硬質な台詞回しがシーンごとに効いていて、すごく心に残る。

巻数を追うごとにストーリーも人物描写もこなれて来て、どんどん面白くなってくる印象を受けました。

実を言うと、読みはじめは椎葉の取る行動に対し、職務に忠実で優秀な刑事というよりも、私情に振り回されがちで短慮な「はねっかえり」という印象が強く、なかなか馴染めませんでした。汗

でも、読み進めていくうちに、このキャラの自虐的な性格がクセになるというか…。この痛々しいほどの不器用さこそが彼の魅力なんだな、と悟ってみたり。笑
特に自分の感情を殺しつつ、扇情的に宗近に抱かれる姿が破壊的にセクシーです。

そういう意味で、自分のもつ脆さや弱さを隠そうと懸命に虚勢を張ってあがく椎葉に溜息をつきつつも、その姿に愛しささえ感じるようになってきました。

これではまさに宗近と同じ!?笑

そんな不安定な椎葉を取り巻く、包容力のある男たちの存在がこれまたよかった。
奈良千春さんのイラストが、さらにその魅力を押し上げてくれています。

宗近(松倉組若頭補佐)はもちろん、宗近の側近である鹿目、椎葉の義兄(姉婿)の篠塚(警察庁警視正)、そして安東(先代エス)や永倉(組対五課の刑事)…と、大人の魅力満載のいい男が目白押し!!

安東については、結局はそっと椎葉の手を握るのが精一杯だったというのが大変哀れで、涙を誘いました…。
宗近は、暗い過去を抱えつつも、どこかあっけらかんとした風情がすごく好きで、時折飛び出すオヤジギャグさえ許せてしまいます。何気に椎葉の一挙手一投足に振り回されている感がいい。
篠塚は言わずもながの「優等生」タイプで、これだけで私の好みの直球ど真ん中。出来れば、椎葉にもっと後ろ昏い思いを抱いていて欲しかったかな。そして、それは墓場まで持っていって欲しい。
と、言いたい放題。笑

そんな彼らの中で、実は「一番キタ」のが『エス 咬痕』の永倉です。
愛に臆病だったがために、自分のエスである小鳥遊(たかなし)に想いを告げることのないまま、永遠に去って行ってしまった男…。
これは泣けた!!

しかも、全編通して私が一番よかったと感じたのは、宗近による言葉責めでイかされる椎葉のオ○ニーショーでも、「餌の味見」と称しての椎葉のフ○ラシーンでも、椎葉の覚悟を決めるための宗近による鬼畜責めでも、二人の絆を確かめようとする埠頭の物陰でのア○カンでもなく、『エス 咬痕』での椎葉と永倉のキスシーンでした。

互いに違う相手を想いながらも、傷ついた魂を舐めあって癒そうとするような口づけは、とても切なく印象的で、BL史上に残る名シーンだと思いました。

で。

自分的にはやはり東明と五党は…タイプ的にダメでしたね。汗
東明は「27にもなって幼稚すぎじゃね?」と思いつつ、まだ可愛げがあるのでいいのですが、五党が…。

自ら破滅への道を歩んでいくようなその生き方に、そうするだけの生い立ちが理由となって存在することを頭では理解出来ていても、残された紀里のことを思うと、どうしようもなく塞いだ気持ちになってしまうのです。

五党の紀里への愛は決して偽者ではなかったと信じたいのですが、もしも新しい命の存在を知ったからと言って、その運命が変わったとは思えない。
五党を救う術をどう考えてみたところで、きっと正しい答えが見つかることはないのでしょう。


英田さんご自身がSHY NOVELSの【『エス』完結記念特集】でこの作品のテーマは「相反するもの」だと仰っています。
刑事とヤクザ、私情と責務、決意と迷い、愛と憎悪、罪と罰、生と死、等々さまざまな関係や思いが目まぐるしく展開するこのシリーズ。
このラストは、きっとファンの大勢が待ち望み、そして納得のゆくものだったのではないでしょうか。

椎葉が心から笑って過ごせる日々が訪れて、本当によかった。
これからは他愛の無い軽口を叩きながら、二人で穏やかに暮らしていって欲しい。

英田さんの作品は『DEADLOCK』シリーズに続いて2つ目でしたが、作品の緊張感溢れる切羽詰った展開からすれば信じられないほどにやさしく、そして静かに物語が閉じられるところもすごく好きです。


でもって、この余韻が抜けないうちに引き続き『デコイ』シリーズに取り掛かろうと思います!
こういう時に名作を味わう楽しみと、溜めた積読を一気に消化する喜びを一度に味わえて、積読がクセになってしまいそうです~。笑

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コメント

おはようございます~♪
『エス』シリーズ、読了お疲れ様です!
引き続き、『デコイ』をガッツリ行って下さい…凄いから…

『エス』が、英田さんの評価を高めたと同時に、ある意味固定付けてしまったところもあるんですが…
とにかく、BL界で屈指の作品なのは間違いないと思います。
私、東明のぐれ方って、ちょっと解るような気がします。愚か者なのは間違いないんですが、でも、たった1年で兄を開放してやれたところが、彼の本質だと思ってやりたいです。
五堂は…あれは、誰にも理解出来ないんじゃないかなぁと思います。大変難しいキャラクターだったと、英田さんご自身も仰ってました。
それと、五堂は紀里が身籠った事を知ずに逝った…そこが、紀里にとって救いであり、未来の光だと思います。
季菜子さま、こんばんは~♪
>『デコイ』
今日「囮鳥」は読み終えました!やはり面白いです~(^_^)
>『エス』が、英田さんの評価を高めたと同時に、ある意味固定付けてしまった
う~ん、確かにそうですよね。もう社会派BL作家さんと言うか、ハードボイルドBL作家さんと言うか、そんなイメージは固定されていますよね。となると、テーマを選ぶのが制限されてしまいそう…。作家さんとしては間口が広い方が、きっとやりやすいのでしょうが。
>東明のぐれ方
そうですね~。ぐれたくなるのも無理も無いですし(^_^;)根は優しい子なんだな、とは私も理解できました。笑
>五堂は…大変難しいキャラクターだったと、英田さんご自身も仰ってました
そうですか~。確かに納得です。たまに作者の手を離れて一人歩きし始めるキャラがいると言いますが、そんな感じだったのでしょうね。
>紀里にとって救いであり、未来の光だと思います。
激しく共感です~!!「残光」のタイトルはまさにそこにかかってるのでしょうね。

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