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木原音瀬『FRAGILE』(B-PRINCE文庫)

覚悟を決めて読み出しましたが、途中何度も挫折しそうになりました…。

と、いうことで木原音瀬さんの『FRAGILE』(B-PRINCE文庫)を読みました!
FRAGILE (B-PRINCE文庫 こ 1-1)
大河内の人生は、バラバラに壊されてしまった。一人の男の手で-。才能あふれる部下・青池を嫌い、一方的に蔑ろにしてきた大河内。我慢の限界を迎えた青池は大河内に襲いかかるという事件を起こし、会社を去っていく。目障りな存在がいなくなり安堵したのも束の間、ある夜、その青池が大河内の自宅で待ち構えていた…!大反響の雑誌掲載作に大量書き下ろしを収録。二人が踏み込んだ愛憎の迷路のたどり着く先は-。

■初出■
FRAGILE/小説b-Boy2000年8月号(リブレ出版巻)掲載
ADDICT/描き下ろし

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「相当イタイ=痛い」、「かつて“お犬様”と呼ばれていた」、「愛がない」等、さまざまなうわさを耳にしていた「FRAGILE」。

木原作品はこれまで『箱の中』と『檻の外』しか読んだことがなく、しかも、他に楽しそう(?)な作品もたくさんあるらしいのに、どうして3冊目にこれを選んでしまったのか、自分。

今となっては「だって、それが運命だから」、としか言いようがありませんが。

世の腐女子の皆さんに深く愛され、熱烈に支持されている木原作品ですが、何とな~く「鬼畜っぽい」という先入観が先立ってしまっていて、これまで書籍を見かけては一応購入していたものの、買ったら積読コーナーに直行!という、かなりかわいそうな扱いをしておりました…。

きっと、1番キツそうなヤツさえクリアできれば、これから起こる(読む)どんな事柄(木原作品)にも必ずや対応できるに違いない!との深層心理が働いたことは否めません。

陵辱モノは何より苦手なのに、そんな読者にも一気に読ませる力量はさすがといいましょう。

「FRAGILE=脆く弱いこと、傷つきやすいこと」、「ADDICT=依存する、(麻薬などに)溺れる」。
このタイトルの意味を知ってから読むと面白さも増すようです。

永遠に続くかと思われる愛と狂気が織り成す愛憎スパイラルに、ガッチリ心を捉われました!


【FRAGILE】【ADDICT】

これから先、誰と愛し合ったとしても、
俺以上にあなたを憎んで、好きになる人間はいない


自分好みの容姿を持つ会社の上司・大河内に、密かに思いを寄せるゲイの青池。でも、本来出世欲に満ちた大河内にとって、仕事の出来る青池は自分の地位を脅かす目の上の瘤でしかなかった。
部下となって以降、大河内による仕事上の数々の妨害に耐えていた青池だったが、社内での自分の性癖の暴露にいたってついに、愛を憎悪に変換させる。
自宅前で待ち伏せての監禁と暴力、加えて人間の尊厳を失わせるに足る数々の仕打ち…。
そんな恐怖による支配が続く中、頑なに青池を拒んでいた大河内が、わずかずつだが心を開く様子を見せはじめる…。

* * *

先日、榎田尤利さんの『獅子は獲物に手懐けられる』 (SHY NOVELS) をけっこういい調子で読めたので、この分じゃ痛そうなのにも免疫出来たかもな!なんて思ったんですが、いかんせんレベルが違っていました。スミマセン。
(いや、『獅子は~』も私としては相当痛かったんですけど。汗)

BL作品を読むときに、私はやはりその物語にある「ラブ」を探してしまうのですが、これは読み終わってからしばしの間、果たしてそこに愛は存在するのかどうか、しみじみと考えさせられてしまいました。

目下には傲慢なくせに小心で権力に弱く、自らの保身と出世のためなら他人に媚びへつらうことも厭わない大河内。
仕事は出来るがゲイというマイノリティの苦悩を抱え、ただ好みのタイプというだけで、大河内に惹かれてしまった青池。
上司の退職を機に大河内の部下になったその時から、「ただ側にいて彼の役に立ちたい」というささやかな願望が踏みにじられることになります。

あまりに子どもっぽくあからさまな大河内の接し方に深く傷つき、絶望した青池は、ある出来事をきっかけに「キレ」てしまい、以後大河内に対して「支配」という形で君臨し始めます…。

これが正真正銘の「ヤンデレ」ってやつですよね。汗

大河内目線の「FRAGILE」でのひたすらに続く陵辱の場面から一転し、青池目線で語られる「ADDICT」では、大河内と青池の間に不思議な親密さが漂い始めます。

「え?まさか?でも、人間は極限状態に置かれたらこういう風にもなり得るの?」
と、読んでいてこちらもハラハラ。
そして、息も継がせぬ急展開につぐ急展開を経たのちのラスト5ページに、新しい二人の関係が描かれるのです。

命を守るために人としてのプライドをかなぐり捨てて服従に徹した大河内にとって、自分の言葉ひとつで簡単に命を手放そうとした青池に、畏怖の念を抱いたのでしょうか。
または、自分のためにそこまでする男に対しての憐憫なのか?

大河内の性格から言って、ほだされることは有り得ない。
声のないまま病院のベッドの上で爆笑した青池の胸に去来したものは、大河内はどんな時も自分のことしか考えないという現実に対する虚無感だったに違いない。
そして、血の海の中で大河内の脳裏をよぎったのは、地獄のような日々から解放される喜びより、青池がこの世から消えた後の人生が自分にとっていかに刺激がなく味気のないものになるかという怖れ…それだけだったような気もします。

それにしても。
この哀れで異常な関係についてあとがきで「ハッピーエンド」だと言い切った木原さんの感性には、ただただ脱帽するしかありません。


とまあ、読後に奇妙な後味を残しつつ、ずしんと重苦しい作品なのですが、この二人について言い得て妙な感想を述べていた方がいました。

つまりは「蓼食う虫も好き好き」。
そして二人を「割れ鍋に綴じ蓋」だ、と。

なんだか…

そうアッケラカンと言われちゃうと、もうそうとしか思えなくなって、急に救われた気分になりました。笑
これで他の木原作品にも、ぼちぼち取りかかれそうです~。

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コメント

趣味じゃないんだ
三浦しをんさんの「趣味じゃないんだ」というタイトルの由来を思い出しました。ちょっと違うけど。
一番きついものから読むと後が楽・・・それはもう趣味と言うより「修行」ですねpapicoさん(^^)
私も鬼畜っぽいのは苦手です。日常に限りなく近い作品に惹かれる傾向があるみたいです。だから西田東好きなんですかね。(「願いかなえたまえ」は最初は苦手でした)

明日美子さん読みましたー。日常とは遠い絵柄だけど、大丈夫でした。ヤマシタ作品には入れなかった私ですが、なぜか明日美子さんは入れました。面白かったです。でも「バラ色」は確かに読んでてスピンオフであることがありありとわかるので、本編を読まないと意味がないのねーと思いました。明日美子さんの絵は装飾的だけど、大人の男性はちゃんと大人の体型をしてて、そこが好きです。

そうそう、ヤマシタ作品に入れない理由をあれこれ考えていましたが、結局は私にとって「萌えがない」(フラワーオブライフ真島のセリフで覚えた言葉)ということなんでしょうね。これはもう、しょうがないんでしょうねー理由なんてないんだわー。あー世間と自分とのズレが痛い。
こきちさん、こんばんは!
>それはもう趣味と言うより「修行」ですねpapicoさん(^^)
あははは!確かにそうですね。なんでそこまでして読む必要があるのか、って感じですよね(^_^;)後学のために…としか言えないっていう。笑
>日常に限りなく近い作品
私もその傾向あります~。人物の何気ない会話とか、部屋の中とかすごく気になってしまうので。だから依田沙江美さんとか好きなんですよね。
>明日美子さんは入れました
わ~、それはよかったです♪「バラ色」を読んで本編を読むと、「ああ、モーガン…!」ってなります。いや、それは私がモーガン好きだからかもしれませんが。汗 本編もいつか機会を見つけてぜひお手にとってみて下さいませ。
>「萌えがない」
これ、「FRAGILE」のレビューにも散々書かれていた言葉ですね。汗 
>これはもう、しょうがないんでしょうねー理由なんてないんだわー。
そうなんですよね~。いくら他の方のハートに響いたとしても、自分にしっくりくるものって、けっこう限られますよね。でも、それはそれでいいと思うんですよ~。色んな萌えがあっていいですし、お互いそれを攻撃するのでなく、認め合えばいいのかなって思うんです。だから痛くなんてないですよ!
私も一時(今もかな?)多くの人に絶賛されていて色んな方にススメて頂いたある作品のよさが、正直ぜんっぜんわかりませんでした。滝汗 でもそれはきっと世代の違いもあるのかも、って思ったんです。その作品を読んだ時に、恋愛観の相違のようなものを感じてしまって…。でも、それは自分が枯れてしまったようで、けっこうショックではありました・・・。笑

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