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小玉ユキ『坂道のアポロン 2』(フラワーコミックス)

ああ、恋とはなんとままならないものなのかしら。

と言うことで、小玉ユキさんの『坂道のアポロン 2』(小学館/フラワーコミックス)を読みました!

坂道のアポロン 2 (2) (フラワーコミックス)
―1960年代を舞台に描く、友情と恋と音楽の日々!
66年、九州。転入した高校で不良の千太郎(せんたろう)と出会った薫(かおる)。千太郎に振り回されながらジャズを知り、律子(りつこ)に恋をし、すべてが初体験の日々の中、3人の関係を変える出来事が次々と…! 眩しくてほろ苦い、直球青春物語。
<同時収録作品>インターチェンジ

[flowers]2008年4月号~2008年8月号掲載

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楽しみにしていた2巻です!
1巻を凌ぐ勢いで面白かったです!(1巻の感想はこちら

ああ、こりゃもう、なんと言ったらいいのか…。
この作品全体が愛しくてたまりません!

私にもまだこういった作品を純粋に楽しめる気持ちが残っていたようで、ほっとした、みたいな。笑

5月に1巻が発売されたあと、7月にasahi.com『漫画偏愛主義』で取り上げられたので、きっとその後一気に読者を増やしたのではないかしら?と思います。

月刊 flowers (フラワーズ) 2008年 07月号 [雑誌]
←月刊 flowers (フラワーズ) 2008年 07月号表紙

1巻のラストで登場した美女をめぐって、千太郎、薫、律子(左の眼鏡が薫、真ん中のバンカラが千太郎です)の関係に変化が訪れます。

少女マンガでは、これまで恋する葛藤を通して少女が成長する物語が数多く描かれてきたと思うのですが、この作品は薫視点で描かれていることもあり、少年が恋を経験することで大人になっていく様がとても丁寧に描かれていて、そこが新鮮だと思うのです。

小玉ユキさんは、これまで人魚や白鳥などのちょっと変わったモチーフをご自分の作品に取り入れて来て、またそれが個性の作家さんですが、今回のように多感な時期の青少年の「恋愛」を真正面から描くにあたって選んだ背景が「1960年代の長崎」だったことがとても興味深いです。

この作品に必要だったのは、きっとこの時代の「空気感」。
だから、それが「リアルじゃない」としても、それはそれで構わないと思うのです。

彼らの繊細な心の動きに、きっと誰もが“恋するときめき”を思い出せる。
しばらく少女マンガから遠ざかっている方にも、ぜひ読んでみて欲しい作品です!


【坂道のアポロン 2】

だめだ こいつといると どうしても楽しいや


不良に絡まれていた女性を助けた千太郎は、彼女の美しさに一目惚れしてしまう。後日、その美女・百合香が同じ学校の生徒だと知った薫と千太郎はなんとかその女性に近づこうと画策し、一緒に遊びにいく約束を取り付けることに成功する。
が、自分のエゴで千太郎に思いを寄せている律子をひどく傷つけてしまったことを後悔した薫は、浮かれる千太郎とある日教室で一触即発の状態に。
そんな時、淳一からクラブでのジャズ演奏の出演依頼が来て…。

* * *

あっちとこっちをひっぱって、きゅきゅっと赤い糸で結んでしまえ~!

とは単純にはいかないところが、恋の醍醐味というものなのでしょうが…。
人様の恋模様なのに、こんなにハラハラどきどきしてしまうなんて。

これぞまさに“青春のときめき”が、ギュギュッと詰め込まれております。

あけっぴろげで豪快な千太郎が見せる、恋する男の可愛げ。
楚々とした律子が見せる、奥ゆかしい健気さ、いじらしさ。
恋を通して、自分の醜い部分を知り自己嫌悪におちいる薫…。

幼さを残しながらも、一生懸命人を好きでいる彼らの姿に胸がきゅんとなります。

時に感情をそのままぶつけて喧嘩になったとしても、音楽を通してすぐに仲直り出来る千太郎と薫。
そんな二人に「男の子はさっぱりしていてうらやましい」と、つぶやく律子。

性格は正反対ながら、しっかりとした友情がそこには芽生えています。
けれど、その後千太郎と百合香が、ひと目を忍んで会っているのを見てしまった薫は、言いようのない激情にかられて、「いつか王子様が」の曲とともに、律子に自分の気持ちを告げるのです。

好きな人にはいつも笑っていて欲しい、その純粋な気持ちにあと押しされて、気持ちのままに告白した薫は充分男らしかった。
この恋を通してどんどん大人に近づいていってるなあ、と感じるのです。
その成長ぶりがすごく楽しい。

薫→律子→千太郎→百合香と、見事なまでに一方通行な彼らの恋ですが、どういった運命のいたずらか、マドンナ百合香嬢にも新たに心ときめかせる男性が現れてしまいます…。

出会いは最悪でも、ちょっぴりワルで大人なカレの魅力を前に、お嬢は一発で恋に落ちるのよ・・・。

ああ、やっぱり!!やっぱりね~!!
と、まさに昭和30年代的なベタな展開にも、激しくうなずいてしまいました。

ジャズの演奏シーンでは、まるで音楽が聞こえてくるような描写にため息し、百合香が恋に落ちる場面では、彼女の胸の高鳴りさえもが聞こえてくるかのよう。

小玉ユキさんがとても楽しんでこのマンガを描いているんだな、というのが伝わってきます。

焦らずに、彼らと一緒にその恋も育っていけばいい。
多分、彼ら皆がハッピーエンドになることはないとは思う。
このあと何巻かかってもいい。
純粋ですれていない、彼らの恋の成りゆきを、ゆっくり見守っていきたいなぁ、と思うのです。

そして、明るくて豪快な千太郎が一人ひっそりと抱える痛みがなんなのか。
続く3巻ではぜひそのあたりも明らかにして欲しい。
次巻がすごくたのしみです!

ところで。

どうでもいいことなんですけど、なんかもう、私…。
薫が可愛くて仕方ありません!!(以前からしつこく言っているが)

黒縁の眼鏡も、風にそよぐ黒髪も、父が去ったあとに見せる涙も、律子を見つめる視線も、ほんのり赤らめた頬も、そんな薫のなんもかんもが可愛いいんですけど、最高~に可愛いのが、「あたまの丸み」!

特に斜め後ろからのまあるい描写が可愛いのなんの。
「後頭部萌え」って新しいかも…。


【インターチェンジ】

さよなら ずっと忘れないよ

「高速道路の出口のループを10周すると・・・」
そんなおまじないのような、都市伝説のようなお話と思い出を残して彼は。

* * *

12pの短編。
秀逸です。

確かに存在していた人を、突然に失う悲しみ。
その喪失感を人はどうやって埋めていくのか。

そんな、ものすごくたいそうなテーマが、あくまでさらっと描かれている。
そこにこの作者らしさと、大きな才能を感じます。

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