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杉本亜未『ファンタジウム 3』(モーニングKC)

世に名作と謳われる作品は数あれど、これもその内のひとつに数えるに値することは間違いない。

ということで、杉本亜未さんの『ファンタジウム 3』(講談社/モーニングKC)を読みました!

ファンタジウム 3 (3) (モーニングKC)
“変われない自分”を誇りに思っていい。マジックの世界を舞台に描かれる“心”の物語。

テレビ出演が決まった良は、その番組でエンタメ集団K.O.Mとの共演することになった。K.O.Mの代表は、良のマジックの才能に興味を持つが、良は自分と彼らのマジックに対する考え方の違いに戸惑ってしまう…。

■CONTENTS■
#8 ヤコブの梯子(前編)…08年モーニング・ツー8号
#9 ヤコブの梯子(後編)…08年モーニング・ツー10号
#10 The Last Unicorn(前編)…08年モーニング・ツー12号
#11 The Last Unicorn(中編)…08年モーニング・ツー13号

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杉本亜未は常に渾身の力で、人間がなにを魂の糧として生きるのかを表現する。漫画を愛してきて本当によかった。『ファンタジウム』に出会えたのだから
―三浦しをん―


書店で、帯に寄せられたしをんさんのメッセージを読んだとき、得体の知れない熱いものが胸の中にこみ上げてきました。
いってみればその感情は「同じ感動を共有できる興奮」、とかそんなものなのだろうと思います。

多くの人に知ってもらいたい。
そして、同じ気持ちを味わってもらいたい。

漫画読みとして心からそう思える作品に出会えて、私も漫画を読み続けてきて本当によかったという思いをしみじみと噛みしめています。

無垢な魂をもつ良を思わず抱きしめたくなる。
そして山口さんが素敵すぎ♡ な3巻でした!


真っ直ぐにこちらを見つめる良の瞳の輝きに、いつも惹きつけられます。
そこに映っているのは一体どんな世界なんだろうと、想像せずにはいられない。

【ヤコブの梯子(前・後編)】

おじさん 俺 生まれてきてよかった


テレビプロデューサー藤原の口利きで、アメリカンスタイルのマジックショーを日本に定着させようとしているK・O・Mの木戸社長に引き合わされた良は、そのメンバーの前でカードマジックを強要された途端に腹痛で倒れてしまう。
そして、良をK・O・Mに勧誘され、北條は悩む。
後日、公園でリングマジックを披露している良は、一人の外国人マジシャンと出会う…。

* * *

・ヤコブの梯子( はしご)=英語でジェイコブズ・ラダー(Jacob's Ladder)は、旧約聖書の創世記28章12節でヤコブが夢に見た、天使が上り下りしている、天から地まで至る梯子、あるいは階段のこと。
・雲の切れ目から太陽光が帯状に伸びて見える自然現象の一種。別名は「天使の梯子」。
・日本でパタパタ、板返し、団十郎のからくり屏風と呼ばれる玩具の英語圏での呼び名。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 「ヤコブの梯子」より転載)

雲間から差し込む光を、私の地方(というか友人の間)では「神さまの階段」と呼んでいました。でも、どうやら「ヤコブの梯子」の方が一般的みたいですね。
勉強になるなぁ。

さて。

2巻でのラストがあまりに鮮やかだったので、正直はじめは3巻のページをめくるのが怖かったほどです。(1・2巻の感想はこちら
でも、そんな心配は大きなお世話って感じでしたね。

新進気鋭のマジシャンとして大きな成功をおさめるジェイド・カザマ。
マジックを商業ビジネスとして扱おうとするK・O・M社長の木戸。
そのメンバーでありながら、自分のマジックに限界を感じている山口忍。
移民であり、一度はアメリカという夢の大国で成功をおさめたボブ・スミス。
そして、良の才能を信じ世界に通用するマジシャンにしてやりたいと奔走する北條。

多くの大人の思惑に囲まれながら、良は自分のマジックについて、ひいては自分の存在意義について自問自答します。
そんな時期に知るクラスメイト達からの心ない中傷…。

けれど、良は悩みがあっても、誰にも相談しようとはしません。
たったひとりで、深く深く自分の中を探っていって、「これ」という答えを導き出そうとします。

それは生まれつき抱える「難読症」という障がいのために、周囲から孤立しやすく、同時に自分に対する理解は得がたいということを身を持ってわかっているから。

答えを出せるのは自分だけで、それはとても孤独な作業だということを、その年齢で知っているのです。そして、それは良き理解者であろうとする北條でさえうかがい知れぬ一面なのでしょう。

それだけに、自分とマジックとの関わりに答えを見出した時の良の晴れ晴れとした表情はとても印象的です。
その表情に、彼ならばどんな困難も乗り越えていってくれるだろうという期待がもてたことがとても嬉しい。

他者と自分とのつながり。
それはつまり、世界と自分とのつながり。

マジックを通して自分の居場所を見出した良は、これからはきっと迷わずに自分の登るべき階段を上って行くのだろうと思います。
これからの良の成長がさらに楽しみです。

そして、リンキング・リングを披露する良を描く画面の美しさには見入ってしまいますよ!
白と黒の画面が、幻想的にキラキラと輝いて見える。
良のマジックに魅せられる観客の興奮までもが伝わってくるかのような描写に、脱帽です。


【The Last Unicorn(前・中編)】

1回だけ読んで終わっちゃダメだよ それ!

俺は 良を通して 自分の夢を見てるんだろうか?


テレビ出演以降、あちこちのメディアに登場する機会が増えた良。北條がマネジメントをし、そのことにやりがいを見つけてもいた。だがそんな時、良に大手の芸能プロからスカウトがくる。
同時期に会社で異動を申し渡された北條の配属先は広報で、その仕事内容はと言えば…。

* * *
最後のユニコーン作中で取り上げられているのはピーター S.ビーグル著『最後のユニコーン』(早川書房)です。
恥ずかしながら、私は初めて知りました。(漫画はともかく、文学のファンタジーはあまり読んでいないので…)
ちょっと読んでみたいと言う気にもなったのの、「形而上学的なストーリー」とあるので、それを私のオツムで理解できるのか…。甚だ疑問で自信がありません。汗

さて。

こちらは“北條編”とも言えるお話です。
良のもつ才能を信じ、いつか日の当たる場所へと連れ出してあげたいとの一心で、仕事のかたわらマネジメント業もして来た北條。
でも、芸能プロダクションのスカウトに「才能のある人間には、いつか依存してしまうものだ」と指摘され、ショックを受けます。

「天に選ばれた人」というのは確かに存在すると思うのですが、身近にそういう人物がいるほど、自分の社会的な役割や可能性について、自信が揺らぐのは間違いないかと…。
人並み以上の「何か」を持って生まれた良に、やはり北條は自分の夢を重ねているだけなのか。

3巻に収録されているのは“中編”までなので、まだその答えは出ていませんが、これを機に北條と良の関係に大きな変化が起こるような予感もします。

人生において何に価値をおくかは、まさに千差万別。
そしてその何かを見出せる人は、本当に恵まれているのだろうと思います。

ただ、これまで北條が良に対してとってきた「~してやりたい」というような奢った考え方で接するのは、そろそろ限界なのではないのかしら?

相手が(障がいのある)子どもだという概念をスッパリ捨てて、良という存在そのものと真正面から対峙しないと、正しい関係性は作っていけないのではないかという気がします。

果たして北條にはその答えが見つかるのか…。
早く「後編」が読みたいです!

ところで。

ラストはかなりびっくりな展開で終わりますが、一体ぜんたい良に何があったのでしょうね…。いじめられていることの延長だとしたら、ホントに胸が痛みますが。

でもって、どうでもいいんですけど、前髪を下ろした方が北條が存外いい男だった!
いつも下ろしていればいいのに~。

楚々とした美人の山口さんにはちょっぴり裏切られ感を抱いてしまいましたが(スーツ萌えな女性キャラで充分素敵な人ですが。汗)、ジェイドといい、北條の友人の加賀谷といい、杉本さんの描くキャラは時にビックリするほどいい男が出てくるのが楽しいですね♪←結局そこかよ


↓さて、最近デザインがより可愛らしくなった良くんのサイトはこちら
ファンタジウム~長見良の魔法世界へようこそ!

イラスト上でマウスを動かすと、きらめく星ぼしがあなたを魔女っこにしてくれます♪シャランラ~☆

ブログの管理人さんは相棒の北條さんで、マジメな更新ぶりにいつも口元がほころんでしまいます。
マジックにちなんで「トランプ柄グッズ」をコレクションしているんですけど、これがまた様々なものがあって、見ていて可愛くてどこかで見つけたらきっと欲しくなっちゃうようなモノばかりです。

北條が撮ったスナップ(という設定)で、良のコスプレ(?)やキュートな表もいっぱい♪見ていて飽きませんよ~♡

それから、9月に杉本さんが『webラジオハラショー』にご出演されていました。
(空美さん、教えて下さってありがとう!)
無料会員登録すれば4週間分のバックナンバーが聞けるのですが、今はもう#165のみしか聴けません。(番組#164と#165でした。)
怪獣が大好き!とすごく熱く(マニアックに)語る杉本さんに『アニマルX』への情熱の片鱗が垣間見えます。
裏話もあるので、ファンなら必聴ですよ♪

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コメント

おそくなりまして
papicoさん、こんばんは~☆

>多くの人に知ってもらいたい。そして、同じ気持ちを味わってもらいたい
papicoさんの願いでもあり、私を含めたファンタジウムのファンの願いでもあるこの気持ちが通じたのか「このマンガがすごい!2009 オトコ編」の10位にランキングされましたね!本当にうれしいです♪これを機に、たくさんの人に読み継がれていって欲しいです。
>彼ならばどんな困難も乗り越えていってくれるだろうという期待がもてたことがとても嬉しい
前回、私は良ちゃんが強いとコメントしましたが、撤回します。それは泣かないことが強いことであると勘違いしていたからなのですが、実は計り知れない深い絶望から、あきらめていただけなんだと気づかされました。それでも彼が立ち上がるたびに私は勇気づけられ、そのまっすぐな瞳に心が洗われるような気がします。そんな彼を支え、生きる道しるべでもあるマジックとの出逢いこそ、良ちゃんにとっての最高の、そして今も続いているマジックだったのかもしれませんね。
>北條が良に対してとってきた「~してやりたい」というような奢った考え方で接するのは、そろそろ限界なのではないのかしら
私は雑誌のほうは追っていないので真相は明らかではないのですが、以前、先生のブログで新しいマネージャーが云々…と書いていらっしゃったような?どうなるんでしょうね、とっても気になります。
>前髪を下ろした方が北條が存外いい男だった!
この一文に、わたしは思わず吹いてしまいましたよっ!だって私も同じことを思ったんですもの)(≧▽≦)( これはBL読みとしては胸が騒ぐような髪型です!!前髪をあげているときって、良ちゃんの保護者という立場を強調しているような、上から目線?というか一線を引いているようでBL読みができなかったんですけど、前髪をたらしている北条って、良ちゃんと恋仲になってもおかしくない感じの、隣のおにいさん風に見えて、もう萌えまくりました!!ああ、もっと萌えさせてください~
>楚々とした美人の山口さんにはちょっぴり裏切られ感
そしてそして、ここでも同じく激しく同意してしまった私は、永遠にBLから離れられないという性にあらためて気づかされた次第です(笑
>杉本さんの描くキャラは時にビックリするほどいい男が出てくるのが楽しいですね
はい、楽しいです!!!もう、そこが楽しみなんですよ。いえ、良ちゃんのお話があってこそなんですけど。きっと良ちゃんの側にいたら、中身はともかく?こんないい男たちとお知り合いになれるんじゃないかしら、などと邪な考えさえ浮かんでしまうのでした(汗 先生にはもう一度BLを描いてほしいなぁ。アニマルの続きでもいいから。カッコイイ湊がもう一度拝みたいです。
>空美さん、教えて下さってありがとう
そんなこんなで3巻もハラハラドキドキさせられましたが、こちらこそいつも良い作品にめぐり逢う機会を提供してくださって感謝しています。ありがとうございます!!

余談ですが、国立新美術館、サントリー美術館で開催されているピカソ展に行ってきました。まだ体調に少し不安を抱えていたのですが、この先これだけの作品数を鑑賞できる機会はないだろうと考えて、人生2度目になるメトロに挑戦しつつ行ってきました。ゲルニカがなかったのは残念ですが、とにかく天才というのはこういう人をいうんだなと、ただただ圧倒されてきました。本当はフェルメール展も梯子したかったのですが、体力に限界が生じて泣く泣く帰途に。でも東京に住んでいなくて良かったです。きっと破産してしまいますよ~。見たいものがたくさんありすぎて。やはり人が惹きつけられるだけの魅力が東京にはありますよね。なにより驚いたのは交通機関が発達していることと、乃木坂から上野までの料金が190円だったことでした(笑 うらやましい~☆★☆
では、また!!
空美さん、こんばんは♪
>「このマンガがすごい!2009 オトコ編」の10位
そうそう!すごいですよね!!これでかなり認知度があがった気がします。いいものはやはり多くの人に認められるのですね~!1位が「聖☆おにいさん」だったのも、私としては納得でした。笑
>隣のおにいさん風
上手い!まさにそんな感じですよね!告白すると私はけっこう初めのころから「この人の良への執着ぶりは、普通じゃないわ」的腐読みをしていたので、空美さんの純真さに己の邪な心が恥しくなりました~(^_^;)
>永遠にBLから離れられないという性
激しく同感です~。笑 
>先生にはもう一度BLを描いてほしいなぁ。…カッコイイ湊がもう一度拝みたいです。
彼もきっと大人になって、いい父親になってるでしょうね~。ホント、湊と裕司が幸せに暮らしている番外なんぞ読みたいですね!同人でもいいので。
>ピカソ展に行ってきました。
なんと!私も本当は今日行く予定だったんですよ!混んでいたでしょうから、体調心配でしたね。無事に見られてよかったです。フェルメールは残念でした。でも、きっとまた来日してくれると信じましょう。
私も先日の蔵書整理で痛めた腰がまだちょっと不安で、長時間並んで、かつ見られるか自信が持てず断念です。(フェルメールも梯子の予定でした!)ピカソの前売りは買ってしまったので、明日旦那と息子が代わりに見に行くと言ってます。私は明日は吉祥寺兄友でヤマシタトモコさんのサイン会なのです。休日なのに、家族で別行動。笑
>やはり人が惹きつけられるだけの魅力が東京にはありますよね。
そうなんですよね~。私が上京した理由はまさにそれです。でも、いつでも行けると思ってしまって、結局今回のようにギリギリになって涙を飲むこともしばしば。異常なほどの混み方も躊躇の理由になっています。汗 贅沢ですね。
>交通機関が発達していることと、乃木坂から上野までの料金が190円
ふと気づくと新しい地下鉄とか出来てるんですよ!!笑 私も通常JRを使うことが多いので、私鉄の安さには今だに驚かされます。以前はバス+JRで新宿経由で池袋に出ていましたが、最近は自転車をこいで行って私鉄を使ってます。そして、浮いたお金でBLを買う、みたいな。家計の節約はぜんぜん無頓着なのに~!笑
では、これからますます寒くなるので、無理せずにくれぐれもご自愛くださいね~♪

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