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今市子『笑わない人魚』(秋水社/アクションコミックス)

書店で偶然見かけて衝動買い。
だって、すでに持っている「あおば出版」版とは表紙のイラストが違う上に、帯に「描き下ろし」つきってあるんですもの~!

ということで、今市子さんの『笑わない人魚』(秋水社/アクションコミックス)を読みました!

笑わない人魚 (アクションコミックスBoys Loveシリーズ) (アクションコミックスBoys Loveシリーズ)
―あの日、僕が恋をしたのは 夜の水面にきらめく人魚だった―。―
海辺の小さな町に叔父が買ったプール付きの家。
8年前のあの日見たのは宵闇の水に遊ぶ美しいあの人の姿だった。
叔父の前以外では笑うこともない、氷のような美しい人魚。
僕は自分の心もわからないままに、その姿を追い求めて―。
表題作『笑わない人魚』のほか、夜の波間にたゆたう恋心をやわらかに綴る大人の恋の物語4編を収録。
単行本のための特別描き下ろし『海幸山幸』も収録!!

■初出一覧■
笑わない人魚/1996年12月 『COO』vol.1「大人の時間」(オークラ出版)掲載
青髭の友人/1998年1月『COO』vol.6「青」(オークラ出版)掲載
真夏の城/1998年12月『HOTEL-ホテル-』(オークラ出版)掲載
廻遊魚の孤独/2005年2月 コミックス『笑わない人魚』(あおば出版)掲載
海幸山幸/描き下ろし

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あおば出版さんが倒産(破産?)したので、それを秋水社さんが拾った、ということなのでしょうか…?

それにしてもこの作品、2005年の「あおば出版」版と2006年にまた「あおば出版」から出た「ポケット版」、そして今回2008年の「秋水社版」と、3回も単行本化!!
しかも、全部表紙が違うんです。

笑わない人魚 (インファナルコミックス)笑わない人魚 ポケット版 (インファナルコミックス)
左が「あおば出版(インファナルコミックス)」A5サイズ版
右が「あおば出版(インファナルコミックス)」ポケット版

…ね?
だとしたら、買っちゃうじゃないですか!!

なんか、まんまとやられてる感がありますが。
もういいや。
美しいので。

どれもこれも素敵なんですが、私は今回の「秋水社版」の表紙が好き~♡←だから即買いしたという…

美麗なカラーイラストにうっとり見惚れた後は、何度読んでも読むたびに発見がある、今さんの短編集の魅力をじっくりと味わって下さい!


【笑わない人魚】

…そうか 八年前は あんたも子供だったんだ


叔父の寺島庸(てらしま・よう)が海辺の町で買ったプール付きの家。そこで 14歳の洋介が見たのは、宵闇の水に遊ぶ人魚の姿だった。叔父の前以外では笑うこともない、3歳年上の美しいその人の名は見城歩(けんじょう・あゆみ)。叔父と彼の親密な関係に嫉妬を感じて飛び出して依頼、疎遠になっていた叔父の遺言状があると呼び出された洋介は、思い出のその家で8年ぶりに見城と再会するが…。
* * *

相手を想う切なさとやるせなさが、読後じんわりと胸に迫ってくる作品です。

好きな相手にこそ受入れて欲しい。
自分のことを振り向いて欲しい。

決して声高ではなくとも、切羽詰ったそういう想いが、静かな描写からあふれて来ます。

見城が持ち主のいない家のプールに水を張り、7年もの間、寺島の帰りを待っていたように、今度は洋介が見城の気持ちが動くのを待つ番です。

相変わらず雰囲気で読ませるXXシーンが素敵~♪
今さんの作品は、日常でさらっと語られる台詞が実はけっこう色っぽくて、やられた!という気になります。

【青髭の友人】

3度の結婚と3人の妻の死で財産を築いた青島は、妻が死ぬたびに入る保険金で優雅な暮らしをしていることから、周囲から“青髭”と呼ばれていた。青島の友人の二ノ宮覚(にのみや・かく)は、ヤクザ相手の裏稼業で生きているが、ある日偽造パスポートの注文をして来た高校生のハルヒコにつきまとわれて…。

* * *

これ、45pの作品なんですが、実際にはもっともっと長い作品のような気がしてしまいます。

よくもまあ、このページ数にこれだけの伏線と設定を盛り込むよなあ、とただただ感心。
今さんの漫画の作り方のこの緻密さって、やっぱり特異な才能、というしかありませんよね。

青髭の妻の死因をめぐり、全体がミステリー仕立てで綴られますが、それぞれに癖のある登場人物(青島・覚・ハルヒコ)の心情も複雑に絡み合って、より話の奥行が増しています。

二人の抱える秘密が明かされた途端、突然目の前から消えてしまった覚に対しての、青島のモノローグが切なくて、痛い。

最後、ハルヒコが青島に問いかけた台詞。
「あの人の事 好きでしたか?」

青髭の家の一番奥の扉に隠されていたのは、きっとたった一つの真実だったんだと思います。



【真夏の城】

父の死の知らせを受けて、10年ぶりに帰郷した浅田。過去を振り切るように家出して来た彼が、1度でいいから立ち寄りたいとホテルが地元にあると聞いた上司の川江は、わざわざ浅田に着いて来て…。

* * *

高校生の浅田少年が、かわいい…。

楽園まであともうちょっと」全3巻(芳文社/花音コミックス)の名物カップル?川江社長と浅田くんのお話です。
ただし、こちらの方が先に描かれているので、設定もちょっと違っております。

だから、「楽園~」終了後、「あのあと5年間もXXなしだなんて!?浅田くんたら、なんてひどい人!!」と、思った方はきっと早とちりなんだと思う。うん。

ゲイという性癖がもとで故郷を捨てる設定はBLではありがちですが、父親の死をきっかけに故郷に戻り、そこで同じ悩みを持つ親類の少年・江波くんを助け、さらに過去のしがらみの原因となった異母兄・彰との関係まで清算するなんて、浅田くんの手腕、お見事です。
いや、これこそが今さんの手腕と言うべきか。

だけど…。
それが川江社長のおかげのような気がしてくるのはなぜ~~!?
あんまり登場しないくせに、妙なインパクトのある川江。
彼がこの後、今さんにしては珍しいBLでの長期連載の主役を張ることは想像に難くないことであります。笑

で、江波少年になにの手ほどきをする浅田くんが“スパルタの狐”を引用するシーンは、そりゃあ色っぽくて必見です!



【廻遊魚の孤独】

ゲイのサラリーマン・太田は、両腕に時計をはめて変人の噂も高い、本社勤務の寺島洋介のことが気になっていた。その寺島が出張してきた時に、飲みに誘ってみると…。

* * *

その時からずっと ずっとずっと 見城さんが好きです


こんな台詞、一度でいいから言われてみたいよ…。
日常ではありえない台詞が生きている。
BLって、ほんとファンタジーだな~と思うんですが。

さて、こちらは表題作『笑わない人魚』の数年後のお話です。

が。

実は最初読み出したときに、そのことに気づきませんでした~ッ!!
って、すみません。汗

むむむ~。
洋介は初っ端からフルネームでの登場なのに…。

見城さんの氷のような美しさは健在でうれしい。
でもって洋介がすっかり大人になってるから、すぐぴんと来なかったのです~。滝汗

それはともかく。

その手に抱いていても、どこか孤高の人である見城に固執し、恋焦がれる洋介の気持ちがいたたまれません。
そんな気配を敏感に感じ取り、救いの手を伸ばしてくれた太田に自分の気持ちを素直に告白する寺島が、とても愛すべき人間に思えて来ました。

だからこそ体は繋いでも、心までは繋げないでいた二人が、紆余曲折しながらやっとたどり着いた幸福な結末に心底安堵しました。
ラストのプールのシーンがとても素敵で、印象的です。

それにしても、今さんのBLははっきりとした行為の描写が皆無なのに、ほんと色気があるんですよね~。
なんだかかえって想像力を刺激されて、よい。笑

素直でかわいい太田くんには、ぜひ幸せになって頂きたい。
で、この人、会社の人にゲイということを丸ごと認められているのがスゴイと思う。
人徳…でしょうか?


【描き下ろし 海幸山幸】

今市子さんが思う「海寄り」キャラと「山寄り」キャラの分析考です。
確かに今さんの描くキャラって「水」っぽい人と、「大地」っぽい人にわかれますよね。

今さんも海沿い育ちということで、太平洋の海べで生まれ育った私も、とても共感できる描き下ろしでした!

海沿い育ちだからといって、皆が自然と泳げるわけではないんですよ。
小学校の頃カナヅチだった私は、海でガンガンに泳ぐ友達たちに浮き輪を引いてもらって、やっとブイまで到達できたんだよね。なつかしい。
今ではなんとかクロールをマスターしましたが、海ではやっぱり泳げません。とほほ。

そして、東北出身というと「じゃあスキー得意なのね?」と聞かれることも同じ…。
スキーブームだった学生時代に、長野ではじめて挑戦し、流行に乗ってかなり行きましたが、実は東北で滑ったことは一度もありません…。

とまあ、この描き下ろしでこれまでの自分のゆるい生き様をつらつらと思い出してしまいました。

そして散骨するなら・・・私はやっぱり海ですかね。

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