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桑原水菜「炎の蜃気楼」10~12巻(集英社/コバルト文庫)

現在20巻(第二部終了)まで読んだ時点で、小休止中の「ミラージュ」です…。

だって、色んな意味ですんごい消耗しちゃうんですもん。
だけど、早めに感想あげないと、また記憶の彼方に飛んでいってしまいそう。

ということで、桑原水菜さんの「炎の蜃気楼(ミラージュ)10~12巻―わだつみの楊貴妃(前・中・後編)」の感想です!

わだつみの楊貴妃〈前編〉 (コバルト文庫―炎の蜃気楼)
『炎の蜃気楼(ミラージュ)10― わだつみの楊貴妃〈前編〉』
譲の心配をよそに、留年が決定的となった高耶。直江との関係もいっこうに良くならず、「おまえは、直江をなくすことになるぞ」という千秋の忠告にも耳を貸そうとしない。一方、直江と綾子は、闇戦国がらみの海難事故の調査のため、神戸に来ていた。毛利の村上水軍が、巨大な怨霊の戦鑑を作りあげようとしているらしい。そんな時直江は、〈力〉が使えなくなっていることに気づいた。
(1993年8月10日 第1刷発行)


炎の蜃気楼(ミラージュ)〈11〉わだつみの楊貴妃 中編 (コバルト文庫)
『炎の蜃気楼(ミラージュ)11ーわだつみの楊貴妃 〈中編〉 』
大破した船から投げ出された高耶、直江、風魔小太郎は、瀬戸内海の小島に漂着していた。身を呈して高耶を守った直江だったが、その目は光を失ってしまっていた。信長を討つため、毛利、一向宗と手を組もうとする小太郎に、高耶は激しく抵抗するが、直江を人質に取られ、毛利の本拠地へと連れ去られてしまう。一方、大和の謎を追っていた綾子たちは〈楊貴妃〉に会うため、秋芳洞へ向かうが。
(1993年11月10日 第1刷発行)


炎の蜃気楼(ミラージュ)〈12〉わだつみの楊貴妃 後編 (コバルト文庫)
『炎の蜃気楼(ミラージュ)12―わだつみの楊貴妃 〈後編 〉』
輝元が放った銃弾は、直江の心臓を撃ち抜いていた。駆け寄った高耶とたった一瞬、視線が結ばれ、それが直江の最期だった。「直江、早くオレを助けてくれ。早く、おまえがいる世界に帰りたい…。」その瞬間、毛利の本拠・萩城一帯を激しい地震が襲い、巨大な火炎の渦が夜空に燃え昇った。高耶の魂の絶叫が、地上に大崩壊を招こうとしていたのだ。衝撃の第一部完結編。
(1994年1月10日 第1刷発行)

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景虎の記憶が戻るにつけ、高耶の女王様ぶりも堂に入って来ましたね。

それはともかく。

私にとっては、まさに 「衝撃」の第一部完結編でした…。
よもや、こんな風に話が落ちるなんて。
全然予想だにしておりませんでしたので、それだけにショックも大きかったです。

読み始める前に持っていた「ミラージュ」の知識が本当に浅かったので、その分とても新鮮な気持ちで
物語を楽しむことが出来ていたのが幸いでしたが、だからこそ、この3作は本当に痛かった…。

唐突に直江を喪った高耶の魂の叫びが、余韻となっていつまでも心に残ります。



【炎の蜃気楼―わだつみの楊貴妃<前・中・後編>】

おまえはいつだって掴みとろうとしてた、探りとろうとしていた!
おまえの、いや、オレたちの『最上』のあり方を!


怨将狩りに明け暮れ、譲の心配もよそに高校の留年も決定的となってしまった高耶。直江との関係も一向に改善されず、そんな高耶を見かねた千秋に「おまえは、直江をなくすことになるぞ」と忠告されるが、まったく耳を貸そうとしない。
 そんな中、高校最後の思い出にとの譲のたっての願いで広島に修学旅行に来た高耶達は、途中で多くの女子生徒が集団で意識を失ってしまう異常な事態に遭遇する。
 一方、高耶と距離を置いて行動していた直江は、綾子とともに闇戦国がらみの海難事故の調査のため、神戸に来ていた。
瀬戸内海で名を馳せた“毛利の村上水軍”が、巨大な怨霊の戦鑑を作りあげようとしているらしいことを突き止めた直江だが、自分の〈力〉が全く使えなくなっていることに気づき、動揺する。
 そして、高耶の前には風魔小太郎が再び姿を現す。小太郎は、北条氏康の命により景虎の側近となるべくやって来たと高耶に告げる。「北条には戻らない」と突っぱねる高耶。
だが、その時一緒にいた譲に埋められていた“魔王の種”を解凍し、信長がその体を乗っ取り、高耶の目前で復活を遂げてしまう。
 信長により襲撃され、大破した船から投げ出された高耶、直江、風魔小太郎は、瀬戸内海の小島に漂着する。爆破から海へ投げ出された高耶を身を呈して守った直江だったが、その目は光を失ってしまう。信長を討つために毛利、一向宗と手を組もうと提言する小太郎に高耶は激しく抵抗するが、直江を人質に取られ、下間頼竜らにより毛利の本拠地・萩城へと連れ去られてしまう。
 一方、大和の謎を追っていた綾子たちは〈楊貴妃〉に会うため、秋芳洞へ向かい、“楊貴妃”と潮の満ち引きを操ることが出来る宝玉「満珠」「干珠」の存在を知り、毛利の正室であった友姫が、今は戦うことを望んでいないことを知り、協力を約束する。
 そして、萩城は人質となった直江を取り戻そうとする高耶の抵抗により、猛火に包まれていた。逆上した毛利輝元は銃口を高耶に向けるが、輝元が放った銃弾は、高耶をかばった直江の心臓を撃ち抜いてしまう。 唐突に迎えた直江の最期。
「直江、早くオレを助けてくれ。早く、おまえがいる世界に帰りたい…。」
その瞬間、毛利の本拠・萩城一帯を激しい地震が襲い、巨大な火炎の渦が夜空に燃え昇った。高耶の魂の絶叫が、地上に大崩壊を招こうとしていた…。

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まさかあの「戦艦大和」まで登場するとは…!!

すごいよ!桑原さん!!

てな感じなのですが、もはやこれ『戦国時代の怨将うんぬん』以前に、もっとスケールのどでかい話になって来ています~。
闇戦国の怨将だけでなく、第二次世界大戦で無念の死を遂げた海兵たちの自縛霊なども続々参戦中で、時空を超えて現れた霊魂が飛び交う壮絶バトルにはもはや頭がついて行っておりませぬ~。

いやいや、そもそもが空中で不動明王が戦ったり、毘沙門天や菩薩が来臨したり、霊獣、はたまた護法童子や竜(=氏康パパ)までもが当たり前に登場するんですから、今さら驚くのもなんなんですけど。

ま、率直に言えばこれは想像のキャパを超えたと言いましょうか。
桑原さん、素晴らしい発想力です。

だ・け・ど。

この時点で『闇戦国』の勢力分布図を頭に叩き込んで置かないと、実は第二部から話がちんぷんかんぷんになりますので、ご注意くださいね。←自戒を込めたアドバイス

それはともかく。

ここで直江が衝撃の結末を迎えます。
そして、この主従について、これまでものすごい勘違いをしていたんだな~、ということに、やっと気がつきました。

「ミラージュ」とは、景虎と直江という主従の二人の400年に渡る愛憎の「決着」が語られる物語なのかと思っていたのですが、そうではなかった。
物語は「これから始まる」んだと、第一部の終わりにあたって痛烈に思い知らされました…。

精神的に追いつめられた直江は、これまでも崖ッぷちギリギリに立っている様子でしたが、ここに来ていよいよ脆弱になり、一気に転落。
自暴自棄な行為が祟って己の「力」を失ってしまい、その後はまさに石が坂を転がり落ちるように失墜して行きます。
この救いようのない様が、心に痛い。

酒と女に溺れて、《力》を失い、あげくの果てには視力まで失う、って…。
しかもこれ、全部景虎のせいだっていうんです~~。涙

そのことを知った高耶に、「お前のかわりはいくらでもいる」と、戦力外通告されてしまう直江。
直後ブチ切れてまたまた狂犬化してしまいます!!

「・・あなたを全身で記憶したい。その優しい声も、怒りの声も、
 悲鳴も、あえぎも、吐息も、泣き声も…
 肌の匂いも、髪の匂いも、髪の感触も、なめらかな肌も、筋肉の弾力も
 涙の味も、血の味も、汗の味も、唾液の味も、
 胃液の味も、精液の味も、臓腑の味も・・・」


って、出た~~この言葉責め!!!
今回伏字がない分、迫力三割増しです!!

それにしても、「胃液って!?」
さらには、「臓腑って!!??」
耳慣れない攻め方にはいつもドキドキさせられますよ、直江さんたら。

しかも、この合間には「入れさせて」って直球のおねだりまで~~ッ!!

こんな状態でもあくまで攻めていくんだね、直江。
と、なんだか変な感心をしてしまいました。汗


対する景虎は陵辱の記憶がまたしても甦り、恐慌状態に陥って直江を思念波で攻撃します。
異常な気配に気づいた小太郎が洞窟(そう、現場は漂着した小島の洞窟なのです)に戻ると、半裸で直江に組み敷かれる高耶の姿が…。
小太郎が直江をどかして高耶を助け起こすと、その襟元をたぐるようにひきよせ、しがみついて震える…っつーのが、なんともまた罪作りな女王様ぶりです。

でも。

直江の狂犬化→高耶襲う→過去の陵辱の心的外傷により高耶の〈力〉が暴走→直江思いとどまる…
って、この悪循環を繰り返していては、この二人は永遠に結ばれませんよ!?

そんな下世話な心配をしていたところに、この“愛憎無限スパイラル”を抜け出すための答えが、用意されていました。

それが「直江の死」という思いもがけぬ形だったことは、当時のファンにとっては相当の衝撃だったはず。
すでに本編が完結している今読んでいても、こんなに気持ちが揺さぶられるんですから。

しかし、直江ばかりでなく、この時はすでに高耶もかなり疲弊していました。
譲の肉体を使った信長の復活、直江の《力》の喪失と失明、そして謙信公に対する疑惑など、度重なる衝撃と動揺のなかで、ひたすら冷静で完全な「景虎」でありつづけようとした高耶の強靱な理性も、限界を迎えようとしていたのです。

以下、高耶の独白なのですが、このくだりを読んではじめて直江に対する正直な気持ちが現れたと感じた部分です。
少々長いですが、抜粋します。

高耶「直江に・・・会わせてくれ」
彼に会って彼の声が聞けたら、こんな動揺はきえるかもしれない。
高耶「・・・いますぐ会いたい・・・!」
(中略) 
《力》なんかなくていい、目が見えなくてもいい。声を聴きたい。あの低い落ち着いた声を、聴かせて欲しい。いま、あの声が聴きたい。強がるように、奥歯を噛み砕くほど食いしばりながら、高耶はすり切れかけた意識の中で男の名前を呼び続ける。声が聴きたい、と。崩れそうな自分を支えて欲しい、と。
 
(おまえは、もっとオレを欲しがり続けるべきだ)
(もっとオレを欲しがれ!)
欲しいと言いつづけて欲しい。もっと言って欲しい。いつまでも言って欲しい。何度も言って欲しい。飽くほど言って欲しい。抱きたい、手に入れたい、キツく独占したい、と。もっと所有して欲しい、もっと抱いて欲しい。心も肉体もすべて俺のものだ、と。叫んでほしい。宣言して欲しい。誰にも触れさせない。いつまでもあなたは俺だけのものだ、と。
(もっと!)
胸が張りさけんばかりに叫ぶ。
(もっと・・・!)
 
「あいつの本心は、オレがこの耳で聞いてやる。オレを捨てるというのが本心だっていうんなら、オレがこの手で殺してやる・・・!」
「あいつを生かすも殺すも、資格はオレだけのある。オレにしかない。あいつ自身にすらない。オレの許可なしに、あいつが死ぬことはできない」
「あいつはオレにしか興味を持たない。オレしか見ない。オレだけの飼い犬だ。全部がオレのものだ。あいつの眼も、記憶も・・・歴史も!誰にも触れることはできない、オレ以外の人間が、あの存在に関わることはゆるさない!」


うわ~。
直江に負けず劣らず、重くて熱い言葉の数々です。

だけど。

とうとう言っちゃったね!?「飼い犬」って!!
高耶が女王様と称される所以が、やっとわかった気がします…。


直江の解放を拒否されたばかりか、直江を毛利の臣下として迎えると言われた高耶は、直江を助け出すために霊獣を使って火竜を呼び放ち、炎に包まれる萩城で真実を聞きだそうと直江と対峙します。けれど、景虎との関係に終止符を打ちたい直江は、高耶自らの手によって死ぬことを望みます。
だが、輝元が撃った凶弾から高耶を庇い、その場に崩れ落ちたのも直江でした。

直江を喪ったショックから、精神的に崩壊しそうになる高耶でしたが、父・氏康が現れて力を貸り、また綾子達の活躍によって、なんとか信長を退けることに成功します。
でも、その後信長に撃沈された「大和」のために集められた霊魂を“結界調伏”し、さらに譲を解放するために放った解凍波(ここでは謙信公が景虎に協力)で、ついに精根尽き果てて気を失うように眠りに落ちた高耶。そして、3日後、目が覚めた時には無意識下で直江の死を認識することを拒否し、小太郎を直江だと思い込んでしまうようになっていたのです。

小太郎よ、哀れ…。
でも、直江として、皆にコーヒー入れてくれるんだね…。

ともかく、読んでいてこんなに気持ちが沈みこんだ作品は、杉本亜未さんの「アニマルX」のシリーズ以来かと。

だけど、こうなったら高耶と直江の求める「最上のあり方」を是が非でも見届けなくてはいか~ん!
そんな使命感にも似た感情が沸き起こるのも事実。

「失って初めてその存在の大きさに気がつく。」

そんな高耶の視点で描かれる第二部は、またまた怒涛の展開が繰り広げられます。
今後つけ毛を取って直江としてふるまう小太郎に、要注目です!

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コメント

はじめまして♪
ミラージュつながりで飛んできました。

私は2年前、高2の時に出会い、受験勉強が手につかなかったです(笑)
まだ怨讐の門あたりまでは気力がもったのですが、耀変黙示録のあたりになると、5行読んでは感極まって本を閉じる…ということを授業中にくりかえしていました。
「何読んでるの?」と聞かれて答えられない苦しさと共に…;;

その後大学に入って狂犬の文字から百日の薔薇を手に取ったりといい具合に弾けましたv-218
私は詳しいレビューブログは大好きなので、これからも長いの大歓迎!で読みたいです☆
では失礼します。

…世界史選択の方なら、松岡なつきさんのFLESH&BLOODとかどうですか…??
ますみさん、こんばんは!
はじめまして~♪ますみさんは由緒正しいミラジェンヌさまなんですね!私はミラデビューがついこの間の新参者ですが、どうぞよろしくご指導ください。

>受験勉強が手につかなかった
それはそれはタイミング的に…大変でしたね!読むなと言われても、それはどだい無理なお話ですよね。でも、見事に合格を勝ち取られて素晴らしい!きっと毘沙門天のご加護があったかと。笑

>これからも長いの大歓迎!で読みたいです☆
もっとさくさくちゃっちゃとまとめるのが目標なのですが、しょせん無理!のようです~。汗 思ったことはすべて書いてるという、こんな拙いブログにお付き合い頂けて恐縮です~。これからもよろしくお願いします!

>松岡なつきさんのFLESH&BLOODとか
時代物!なんですよね?ダ・ヴィンチのよしながふみ特集で松岡さんの記事を読んで、いつか挑戦してみたいと思っていました。現在11巻でしたか?機会を作ってトライしてみます~!

それではコメントありがとうございました☆またぜひ遊びにいらして下さい(^o^)/
はじめまして
ミラージュを先月に読み始めまして先日やっとこさ40冊読み終えました。興奮も冷めない間にネットでグルグルして、ここまで飛んできました。ミラージュのレビューは気力的にも大変かと思われますが、とても楽しみにして待ってます!
こんばんは!
mkさん、はじめまして!
40巻制覇されましたか~!お疲れ様ですm(__)m
今28巻まで読みましたが、消耗激しく、最終部を前にしてまたまた小休止中です・・・。続きを読みたいのはやまやまなので、まとまった時間が取れたら一気に行こうかと思ってます。

>レビューは気力的にも大変かと
まさにそうなんです~(^_^;)でも、1度はじめてしまったので、感想は今後気長にあげていこうと思っています。ただ記憶がいつもあいまいなので、読み返しつつになってまた大変です。笑

>とても楽しみにして待ってます!
うれしいお言葉ありがとうございます!マイペースで頑張りますね~!

それでは、コメントありがとうございました♪

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