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ヤマシタトモコ『恋の心に黒い羽根』(東京漫画社/MARBLE COMICS)

才能って、あるところにはあるんだな~。

というわけで、ヤマシタトモコさんの『恋の心に黒い羽根 』(東京漫画社/MARBLE COMICS)を読みました!

恋の心に黒い羽

君に罵られたい、蹴られたい、好かれたい。
ドMの二神は同僚の中頭に恋心を抱いている。好きという純粋な気持ちと、それを覆う汚れた性癖。交錯する感情の狭間で引き出される二神の本心とは…。
表題作ほか、日常から生まれるドラマチックな瞬間を綴った6編のラブストーリー集。描き下ろしでは掲載当初描ききれなかったそれぞれのエピソードを収録!ファン必携の1冊!


■CONTENTS■
ベイビー,ハートに釘/2007.5『BGM Vol.1』
イッツ マイ チョコレート!/2007.7『兄弟カタログ』
悪党の歯/2007.9『不良-ワル-カタログ』
恋の心に黒い羽/2007.10『BGM Vol.2』
その火をこえてこい/2007.11『青春カタログ』
FOOL 4 U/2007.12『BGM Vol.3』
フォトジェニック/描き下ろし
SHORTS CUTS/描き下ろし
悪童の歯/描き下ろし
ONE 4 FOOL,FOOL 4 ONE./描き下ろし

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初出を見て、またこの精密機械のようなお仕事ぶりと、各作品の完成度の高さに唸ってしまった・・・。
才能って、あるところにはあるんだな~。←2回目

さて。

いずれの作品も“アンソロジー”(一つのテーマに添った読みきり書き下ろしの漫画を集めて単行本としたもの)の『BGM(Boys Guys Mens)』と『カタログシリーズ』に掲載されたものですね。
だから、各作品に当然『お題』があります。
でも、ヤマシタさんの場合はこれが一筋縄ではいきません。

例えば「イッツ マイ チョコレート!」。
これは『兄弟カタログ』に掲載です。

テーマが『兄弟』なんだから、BLにおいてのスタンダードは「義兄弟」とか「近親●姦」とか「幼い頃に生き別れになった兄と弟が…」(by「めぐり逢い…COSMO」)とかのお話を想像しちゃうものではないですか!?

え?そんなので今さら誰も萌えないって??
マジで??マジですか???


高校生、リーマン、ヤクザ、パティシエ、デリヘルボーイ…
さまざまな年代、さまざまな職種の彼らの日常に息づく『恋物語』に惹き付けられます。

早く先が読みたい。
だけど、ページをめくるのが何だか怖い。
鋭い。
だけど、やわらかい。

そんな複雑な魅力を持った作品集。
さあ、あなたもヤマシタさんの才能に酔って下さい。



ヤマシタさんの描く手はエロい…。
手が意思を持ってなにかをしようとしている。←毎回言ってる


【ベイビー,ハートに釘】2007.5『BGM Vol.1』 掲載

ばかな子!!


両親を亡くして今は二人で暮らす姉・美樹子と弟・基久。ある日、基久が友人の足田に告白した言葉を偶然耳にしてしまった美樹子は、弟の心情を思い複雑な気持ちを抱く…。
* * *

読み終えた直後、「BLも進化したな~」と、しばし呆然とさせられました。
これは完全に主役は「お姉さん」の美樹子です。
家族の視点をここまで掘り下げて描かれたBLって、これまで読んで来た中で本当に初めてかもしれません。
同性に恋したことを心配した家族があれやこれやの大騒ぎ…的なパターンは、BLでは演出上も珍しくありませんが、この作品では最初から最後まで「お姉ちゃん視点」がブレません。

もちろんストーリーは基久と足田のやり取りを中心に展開しますが、いかんせんこの肝心の2人の本心が語られない。少ない台詞や、丁寧に描かれた表情、仕草、そして美樹子の心情を語るモノローグから彼らの本音を推察するしかないのです。

だからこそ読み手は美樹子にシンクロして、激しく気持ちが揺さぶられる。
つまり、これはある意味我々(読者)視点の漫画、とも言えるかもしれません。

そして、この2人の顛末が非常に気になる…!!
私は、基久の震える釘は、足田のハートを突らぬき通した!と思いましたが。


【イッツ マイ チョコレート!】2007.7『兄弟カタログ』 掲載

高知実(たかち・みのり)はゲイで同期の阪下とはねんごろの仲。ただ、阪下にも秘密にしていたことがあった。それは、家に帰れば6人兄弟の長男だという事実。家では大家族の長兄として家事育児に追われ、気が休まるヒマもない。そんなある日、日頃の愚痴を口にして阪下と大喧嘩をした実は、とうとう弟妹に…。
* * *

『兄弟』がテーマのアンソロで、こう来るところがさすがヤマシタさんです。

これはいうなれば「カミングアウトもの」。
兄妹間で交わされる現実味あふれる台詞が、ぐんぐん読ませます。

長男、長女、次女、次男、三女、三男の6兄弟の個性が言動によく現れていて、面白い!
そこに1人っ子のマイペース感丸出しの阪下が絡んで、いい風合いの作品世界になってます。

我慢に我慢を重ねて長年「いいお兄ちゃん」をやってきた実が、弟妹を前にして本音を爆発させる姿に…
萌えた!

涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくり、感情のままに怒鳴りつける27歳の男に萌えツボを押されるだなんて、我ながらびっくりよ。←基本クールビューティ好き

って、う~~~~わ~~~~!!
なんかヤマシタさんの思うツボな気がして来た!!←今さら手遅れ

エロスはあまり感じられないけど、阪下と実の気持ちは深く結びついてる感じがとてもよいです。
そして、坂下と実は、どっちがどっちなんだろうか…。
勝手な推測では阪下x実なんだけど、これまでのヤマシタ作品での経験から言うと、きっと逆なんだな~。笑


【悪党の歯】2007.9『不良-ワル-カタログ』 掲載

おれはきみのパパの歯がいっとう好きなとこだった


心にずっと想っていた相手の娘から、彼の余命がいくばくも無いことを知らされた唯川が思うことは…。
* * *

人を想う気持ちの強さを、心底「怖い」と感じた作品。
「おれの遺体はあいつの好きに」、と娘の口から語らせるなんて、この組長(名無しなんだよね…)、本当にずるい男ですね。

そして、それを伝えるのが娘だというのも、新しい。
ここでは普通、「息子」を使いたくなりませんか?

なんで卓球なのかが不思議でしたが、「闇を切り裂くスマッシュ」で電撃的に恋に落ちたこと、さらにラストに向かっての畳み掛けるような会話から、放った想いを「返してくれる相手がいない、さびしさや辛さ」を象徴しているのかな、と思い至りました。

このロマンチストが、心からの安らぎを与えてもらえますように。


表題作【恋の心に黒い羽】2007.10『BGM Vol.2』掲載

性癖がおれの純真さの邪魔をする


ドMの二神が同僚の中頭に恋心を抱くが、好きという純粋な感情を自分の性癖で包むことでしか、表現できない。そんな二神に対して、「素も見せやしぇ!!」と言い放つ中頭だったが…。
* * *

切ない痛い辛い苦しい。
まさに二神(ドM)のためにあり、二神(ドM)がいなければ成り立ち得ないお話。

この人、「恋心」と「性欲」が直結してるんですね。
初っ端からのあまりのドM発言に、これは照れ隠しなのか、中頭の返す反応が楽しみなのか、どっちなのかな~、と思いつつ読んでいましたが、反応が楽しみなんだね。本物め。笑

そして、中頭。
見かけによらず純粋な乙女のような男だった…。
これでは「お前がMじゃなければOKだぜ」と言ってるようなものですよ。

本音で恋がしたいと思えば思うほど「黒い羽」はなお大きく、一層黒々と二人を覆い、その間にある溝は底なしに深くなる。
それを互いにわかっているからこそ、切望的なほど、切なく痛く辛く苦しい。

でも、最後に救いがあるのが、ヤマシタ作品のいいところ。
そうだよ、二神。それこそがドMの真髄。笑
これまでドMランキング一位は鈴木ツタさんの「あかないとびら」の升岡でしたが、二神は彼を軽く超えましたね。

また、作品中に文学作品が色々出てくるのも面白い。
大江作品は苦手なので、未読だったけど、今度読んでみようかな、と思ってしまった。
ちなみに、「芋虫」は一度読んだら一生忘れないというインパクトで、私もおすすめです!
夜はうなされるかもしれませんけどね…。フフフ。


【その火をこえてこい】2007.11『青春カタログ掲載

お前の目の奥の火が燃えうつったかな

同級生の鹿目(かのめ)と4月に出会ってから、ずっと「俺とセックスしよう」と迫られている図書委員の六条。夏休みに入ってからも毎日図書室に通いつめる鹿目に、へきえきしている。つれない態度を取る六条の本音とは…。
* * *

「なにこれナチス…?」「まんじ」
このやり取りについ噴き出してしまった。
ごめん。私もそれ高校時代に言ったから。

さて

この作品がこの中では一番好きです。
時おり挿入される文学に絡めたコミカルな台詞回しが効いてます。
ヤマシタさんてば、文学好きなんだなー。

高校時代は、いわゆる“文豪”と言われる作家の作品に初めて触れる世代だと思いますが、(おませさんはもっと早いかな)、それを話題にしただけでちょっと大人の気分が味わえるというか。
六条が文学を話題する時に見せる、ちょっと背伸びした雰囲気がなんだかいいです。

そして、ヤマシタさんの作品には珍しい、高校生同士のいちゃこらぶりが可愛い…。
なんか、心が洗われたよ~~!!
でもって、六条のツンデレぶりがたまらん!!←結局そこ

ちなみに作中に出ている三島由紀夫の小説「潮騒」の例のシーンは大人になってから映画で見ました。吉永小百合さんバージョン。でも他のシーンはあんまり覚えてないです…。トホホ。


【FOOL 4 U】2007.12『BGM Vol.3』掲載

中学の頃から20年思い続けている充夫に「お前が女だったら」と言われるたび、結(ゆい)が感じてきたことは…。
* * *

ああ、また見かけで見誤った~!
結が「総受け」だとは・・・。涙
でも、ナイス豹変です!!グッジョブ!!

でも、なんかこの人(充夫)は視点が変じゃないですか!?
これが…ピュア…なの?

充夫にバカバカと連発する結ですが、「バカな子ほど可愛い」と言いますし。
このバカップルに幸多かれ。

ところで、この当て馬くんがイタイ役回りでもっともお気の毒です。
深く後悔し、早く次の恋を見つけて下さい。


【フォトジェニック】描き下ろし

初めてのデリヘルでやって来たカズヤは、指名違いのバリタチで…。
* * *

ぎゃはははは!!最高に笑える~~ッ!!
おったんちん」!!爆

ヤマシタさんのこのノリが大好きです。
ぷぷぷぷ。

でも、私、今まであまり深く考えずにこの言葉使ってたけど!?
「おいこら、おったんちん、邪魔だよ!!」って。掃除の時とか息子相手に…。
あと5年たったら、また使おう。←バカ


【描き下ろし もろもろ】

全ての作品に描き下ろしつきです。
つべこべ言わすに読んだ方が勝ち。
そして、カバー裏も忘れずチェックすべし!ですよ。


あ~、今作は感情がジェットコースターのように上下する連なりだった…気がする。
今後読み返すときは、その日の気分で作品を選んで読もう!と思う。

それと、感想がいちいち長すぎる。今回ひどいかも。
でも、もう推敲も面倒くさい。
年頭の目標が早くも頓挫してますね。
いやはやごめんなさい。汗

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コメント

はじめまして
はじめまして、お邪魔します!!よろしくお願いします。
ももさん、こんばんは!
こちらこそ、はじめまして~!
今後もよろしくお願いします♪
はじめまして。通りすがりで申し訳ありませんが、一言。

ここを見なかったらカバー裏の存在に気付かなかったです。ほんとにありがとうございます。
最近この本を買ってからというもの、毎日のように読み返しています。
まだまだBL漫画初心者で、今まで
「あるところに男が2人おりました→勘違いその他トラブル→最終的にらぶらぶー」
という王道にしか手を出してこなかったので(もちろんその中にも名作はありましたが)この作品は衝撃でした。
最初の1ページから嫌な予感はしてたのですが、

あの子のハートに 震える釘は 刺さったかしら

の部分で私のハートが貫かれました。
それからはなんだか必死でページをめくり、めくりながらも心の片隅で「なんだこれ!」と叫び続けていました。
いや、今でも「なんだろう、これ」と思ってるんですが…だって悪党~なんかほとんど女子とおじさんしか出てこないのにしっかり面白くってちゃんとどうしようもなくBLなんですよ!

まさかBLで泣きたい気持ちになろうとは・・・。出てくる「好き」「もういっぱいいっぱい」「何か辛い」とか、いろんな感情ががもうどうしようもなく真に迫ってるんですよ・・・。実くんの泣き顔は可愛いし・・・・。

才能って、怖いですね。
とりあえず、ヤマシタ作品は全部そろえようと思いました。

人様のコメント欄で長々と語ってしまい申し訳ないです。一言、とか言っといて・・・・。
それでは。
雪さん、こんばんは♪
はじめまして~!ようこそこんな辺境のブログにお立ち寄りくださいました。
ありがとうございます~☆

> ここを見なかったらカバー裏の存在に気付かなかったです。ほんとにありがとうございます。
そうでしたか!
では少しでもお役にたてたようでうれしいです♪

けっこう見逃しがちなんですよね~。
実はBLはレーベルによってはかならずカバーの下で遊んでいるものもあるので、とりあえずはがしてみるといいものが出てくるかもしれませんよ。笑

> とりあえず、ヤマシタ作品は全部そろえようと思いました。
私もヤマシタさんのは全部持ってます。
あの味わいはほかの作家さんではあり得ないので!

でも、多分もうヤマシタさんはBLでは作品を出さないと思うのですが…。
残念ですよね。

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