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三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)

1月からポプラ社の月刊プシコ増刊 「コミック ピアニッシモ」で、山田ユギさんでの漫画化が決定したこの作品。(関連記事はこちら
うれしはずかしな気持ちを抱えつつ、どんな仕上がりになるかと楽しみにしております♪

で、今回はこの本を知人に貸すことになりまして、押入れの奥から久しぶりに引っ張り出して来て手に取ってみたら、あらら~?ちょっとページを繰るだけのつもりが、読み出すと止まらなくなっちゃって、結局まるまる1冊読み返してしまいました。

いろいろ言われちゃってる作品だけど、やっぱり好きだな~。
この二人。

ということで、三浦しをんさん『まほろ駅前多田便利軒』(文藝春秋)今さらですが、感想です。

まほろ駅前多田便利軒
東京のはずれに位置する‘まほろ市’の駅前にある便利屋「多田便利軒」に舞いこむ依頼はどこかきな臭い。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。やがて切ない便利屋物語。多田と行天コンビの魅力満点の連作集!




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言わずと知れた三浦しをんさんの、2006年直木賞受賞作品。
この受賞記念記者会見で、「愛読書はBLです」と言い切ったしをんさんを見て、一生ついて行こうと心に決めたわけですが。笑

直木賞うんぬんに関しては、私的にはまったくどうでもいいことなのですが、「賞」と関する名前を戴くなら、それなりに認められた作品になるのでしょう。
でも、審査員=読者ではないですから、様々なご意見があるのはもっともなことです。

作品の舞台となる「まほろ市」は、しをんさんが生まれてから現在まで、ずっと住んでいらっしゃる町田市がモデルとは周知のことですよね。地元の人なら誰しもが、「ああ、あそこだ」と分かるランドマークがたくさん出てくるそうです。

私はあくまで「訪問者」としてしか町田に立ち寄ったことがないので、「東京郊外の町」に流れる空気感が、わかるような、わからないような…。
でも、何度か訪れたことがあり、全然知らない町というわけでないし、自分も東京郊外に住む者としては、物語に入り込むのは容易かったのです。

「漫画的」、「ドラマや映画にして欲しい」…。
そんな感想が多い「まほろ駅前多田便利軒」。

再度読み返して改めて、小説は頭の中でイメージしやすいものがやっぱり面白いんだ、と再確認しました。



【「まほろ駅前多田便利軒」あらすじ】

東京のはずれに位置する「まほろ市」。
そこでよろず便利屋を開業し生計をたてる多田啓介(ただ・けいすけ)の前に、高校時代のクラスメート・行天晴彦(ぎょうてん・はるひこ)がふらりと現れる。
行くあてがないからと「多田便利軒」に転がり込み、勝手に居候を決め込んだ行天。
多田と行天の便利屋コンビが巻き込まれる数々の事件と、周辺のきな臭い人々。
ともに過ごす内に透けて見えて来た互いの過去と、現在目の前で起こっている事件を通して相対する、二人の関係に訪れた変化とは…?

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短編をつなぎ合わせてひとつの作品に仕上げてあるので、とても読みやすいです。

そして、便利屋の顧客として、また依頼された仕事を通して、多田と行天に関わる多くの登場人物の生き様を魅力的に描き出していきます。

仕事で見舞う曽根田のばあちゃん、置き去りにされたチワワの飼い主・マリ、そのチワワをひきとる自称コロンビア人娼婦・ルルと、そのルームメート・ハイシー、塾の送迎を請け負うことになった小学生の由良、若くして地元のヤクザの元締め・星とその彼女の女子高生・清海、行天の別れた妻・凪子、などなど・・・。

行天に居つかれてから1年間の間に起こる数々の事件と、それに絡む一癖も二癖もある人間達に、多田もたじたじです。

今作の主人公(だよね…?)である多田は、心に暗く深い闇を抱えながらも、便利屋という仕事を誠実に、きちんとこなしていこうとする生真面目な人間。誠実で一生懸命で情にもろい。
その健気さが魅力です。

そして、影の主役(?)である行天が…やっぱいい!!

捉えどころが無く、いつも飄々としているかと思えば、誰かを守るために常軌を逸した破壊行為に出る行天。周囲に全く関心がないように見えながら、救いを必要としている人間には敏感に反応し、ひっそりと心に抱いたやさしさであたたかく包み込んでくれる・・・。
しかも、まったく無自覚に。

そんな存在感抜群の彼の魅力には、誰も抗えません!

しをんさんは行天が描きたくて、この作品を描いたのでは?と思ったほど。

彼あってこその「まほろ駅前多田便利軒」だし、そのエキセントリックな人物設定こそが「漫画的」「実写化して欲しい」という感想を多く招いた原因だと断定できましょう。


私は小説を読む時に、登場人物を頭の中でドラマのように動かしながら読みますが、しをんさんの流れるような文体も手伝って、この作品は各人物が本当に生き生きと動いてくれました。

最初に読んだ時には、大好きな下村富美さんのイラストから浮かび上がったいい男すぎ!な、多田と行天が走り回り、脳内は大カーニバル状態に!!

で、今回は「山田ユギさん」の絵柄を意識し、勝手に脳内での変換を試みて読んでみたところ…

これがまたしっくり来て、とってもいい感じ~♪

そうか。
こういうキャラが立った人物って、ユギさんの作品には普通に登場してるからか。

そう思い至到った瞬間に、ユギさんに漫画化を依頼したどこかの誰か(出版社の編集さん??まさか、しをんさんだったらすごい。笑)に、感謝の祈りを捧げたくなりました。


この作品の根底にあるテーマは、「家族」と「幸福の再生」。

誰もがもつ家族の記憶。
それがあたたかく素晴らしい記憶ばかりなら、どんなに幸福か。

期待して、裏切られ、胸の奥底に刻み込まれたひどく残酷な記憶。
それを捨てられずに、ずっと抱えながら、それでも私たちは生きていく。
失ってしまった幸福を、どこかで取り戻したいと願いながら。
多田や、「まほろ」に暮らす彼らのように。

1度切り落とされた行天の小指が、またつながれ、そこにたしかに存在するように、「やり直し」の象徴としてたびたび登場するのがとても印象的。

読み終えた後に、彼らが生きる「まほろ」という町は、実は私たちの足元に存在しているんだということに思い至ります。

傷を舐めあう関係でなく、たまにもたれあう程度でも、人は充分に救われるのだということを教えられた1冊でした。

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