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日渡早紀「ぼくの地球を守って」白泉社文庫 全12巻

この三連休に日渡早紀さんの「ぼくの地球を守って白泉社文庫全12巻を読みました!
昨年花とゆめコミックス全21巻をざっくりと読んでいたのですが、ちょっと腰を落ち着けて読みたかったので。

ぼくの地球を守って―愛蔵版 (7)


こちらの作品は1987年から1994年にかけて「花とゆめ」に連載されました。1人の小学生と6人の高校生を軸に、輪廻する主人公たちの前世の記憶をめぐる複雑な人間関係や時を越えた恋愛を描いた近未来SF漫画。


植物と交信できる不思議な能力を持つ高校生、坂口亜梨子(さかぐちありす)は、ある日隣家のイタズラ小学生小林輪(こばやしりん)を誤って自宅マンションの15階のベランダから突き落としてしまう。奇跡的に回復した時、輪にはもう一人の自分が覚醒していた。
一方、亜梨子は前世の夢を共有する同級生小椋迅八(おぐらじんぱち)と、錦織一成(にしきおりいっせい)と出会う。
そんな中、輪は亜梨子との婚約をせがみ、その申し出を受入れた亜梨子は同時期に不思議な夢を見始めるのだった…。

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と、延々と続くあらすじはここで申し上げるまでもありません。
(しかも上の画像は愛蔵版だったり。)

熱烈な「ぼく地球(たま)」ファンを生み出し、当初の予定よりも大幅に連載が長期化したため、時代設定の1991年を現実が追い越してしまったほどです。
一時「前世ブーム」なるものも引き起こし、SF漫画に新たな金字塔を打ち立てた不朽の名作と言われています。

本誌連載時はちょうど高校生だったわたくし。
「花とゆめ」と「月刊ララ」を愛読書としていた時代のはずなのに、なぜかこちらの作品に関する記憶があまりありません…。
中学時代は「アクマくんシリーズ」の大ファンだったので、新たな連載に興味を持てなかったのかしらん。

でも、そのお陰でとても新鮮な気持ちで取り組めたこの作品。
ずっと「SF」のイメージが強かったのですが、大人になって読み返してみて実は立派な
恋愛モノ」だと判断しました!
この作品は「輪廻転生」した人物たちの、過去の記憶との葛藤が中心の物語。

かつて異星人として月から地球を観察する任務についていた7人が、星間戦争による母星の消滅という悲劇を迎え、取り残された月基地内での未知のウイルスによる感染死ののち、地球人として転生し、かつての月での記憶を蘇らせ交流を図ろうとする。

地球の日本人の高校生として転生した亜梨子(モクレン)、迅八(ギョクラン)、一成(エンジュ)、春彦(シュウカイドウ)、桜(シュスラン)、大介(ヒイラギ)ら6人のメンバーと、なぜか9歳も離れて転生した輪(シオン)。

それぞれが前世の人物として覚醒し、その記憶をたどっていくなか次々と明らかになる月基地で起こった事件。高校生として今を生きる彼らを、月基地での記憶が否応なく苛んでいく…。


主役級の人物のみならず、作中に登場するヤクザの田村やESP使いの未久路(みくろ)などの脇キャラも、生い立ちも含めてガッチリからませ、青春群像劇的魅力がいっぱいです。

そしてこの漫画はその斬新なストーリーもさることながら、なんといっても登場人物の肉付けがとても上手い!!
登場するそれぞれのキャラがしっかりと立っているので、お気に入りの誰かに肩入れして読んでしまうはず。それがファン層を広め、またそのファンの期待に応えるべくあらゆるシーンを様々なキャラの視点から繰り返し再現されるうちに、リアルな物語として読者にはインプットされてきます。

ある時は紫苑の、ある時は木蓮の、ある時は玉蘭の立場で同じシーンを繰り返されると、自分がそこに立ち会って見聞きしたような気になって来るのです。そう、まるでデジャヴのように。

そして、いつのまにかまんまとに陥り
「ああ、シオン!それは誤解よ!」とか、
「大丈夫よ、モクレン。そんな風に落ち込まないで~」とか、
「ああ、ギョクランたら!まーたやっちゃったよ~」とか、
脳内に内なる声が聞こえてきます。

「日渡早紀さん、恐るべし!」笑


それにしてもこれだけの長期連載ながら、中心点がまったくぶれずにストーリーを描ききった点は素晴らしい!(ここらへん清水玲子さんの「輝夜姫」(白泉社)とつい比較しちゃったり…汗)
張り巡らせた伏線も、見事に消化しています。

絵も、連載終了時にはもう完成されますね~。
開始当初は、まだまだ…って感じなのですが。
はじめのころに「☆矢」の聖衣が登場するのも、ご愛嬌です。
時代を感じさせます~~。

そしてやはり恋愛の観点からいうと、紫苑と木蓮の二人の気持ちの行き違いや、槐の痛々しいほどの玉蘭への想い(迅八と一成としても含む)、さらに秋海堂の木蓮に対する愛と紫苑への恨みなど、かな~りドロドロとした恋愛感情が渦巻いていて、まさに昼ドラばりの「愛憎劇」が展開!!

もちろん散々前世と今生の彼らに同調し、ハラハラ・ドキドキ・ウルウルしたのち、今生でそれぞれが幸せを手にするラストを確認してホッとするのですが、そこに行き着くまでがいかんせん、長い!!
イタタタ期間をこれでもかとひっぱります~。

紫苑と木蓮の恋愛って、勘違いとすれ違いの連続なのね~。
よかったよ、地球の大気になれて。
(↑これも、最初読んだ時は意味がわからなかった。今回やっと納得。)


で、以前読んだ時はまったく気にならなかったのに、今回とても心に残ったのが「母たちの言葉」です。

輪くん転落事件の際の亜梨子のお母さんの言葉
「ここがふんばりどころだよ。」
輪の前世の話を亜梨子から聞いた時の輪ママの言葉
「信じてみることに決めたのよ いくら考えても同じところにたどり着くの 輪を愛しているってことに。」
未久路が力を使わずにかけっこに出て、1等を取れなくてごめんと報告した時のお母さんの
「私 もううれしゅうて 泣けましてなぁ」

これらのシーンでは思わず涙が…!!

輪くんもちっちゃいのに、病院のベッドの上で包帯だらけか血だらけかって感じで痛々しいよ~~と、涙。
思わずママ的な視点で輪くんを見てしまう自分。
だって、輪くん息子と同い年なんだもん。
高校時代のわたしには想像も出来ない読み方ですね。←当たり前

当時は「紫苑かっこいい~~!!」と、単純に亜梨子なみのミーハーさで愛を叫んでいたのを思い出しました。(だって二枚目で、天才エンジニアで、戦災孤児で、プライドばかり高くて、愛に飢えた男ですよ!?素敵なの当たり前です。これに比べたらギョクランなんて青臭くって~~、みたいな。)
改めて読んでも、もちろん紫苑は永遠の「愛してあげたい男」の地位をキープしたとして、今回俄然気になったのが笠間春彦くん=秋海堂です♪

紫苑そのまんまなインド人とのハーフという東洋美形の外見ももちろん、前世で犯した罪の意識にひたすら苦悩し、輪にはいいように振り回され、田村に泣きつき、未久路に頼り、なにかっちゃあ心臓発作で倒れちゃって、寝巻きが浴衣なんて、かわいいったらありゃしない!!
口元のほくろもいい感じで、作中の「受」キャラランキングは一成を堂々押さえて№1です。
あ、でも木蓮パパのロジオンも純情可憐で見た目もキラキラしいし、その線ではいいとこいくかも~うふふ♪
…って、やっぱりこっちに脳内シナプスが繋がってしまってすみません。

それと、木蓮がはじめの印象とどんどん変わってくるのも成功した大きな要因だと思います。
だって登場したてのまんまのキャラだと、本当に女には嫌われて終わっちゃうタイプ。結局は紫苑とできちゃうし。
それが、詳細な生い立ちを描きこむことで一気に女性読者を味方につけたと思うんですよね。
しかも、ただのお飾りでない血の通った人間くささ(実はおてんばで気が強い)を前面に出してきたのが上手い!

竹宮惠子先生が「竹宮惠子のマンガ教室」(筑摩書房)で、変人キャラ(=風と木の詩のジルベール)を生かすには成長過程を描いてどうして変人になったのかを読者に理解してもらうことが大切とおっしゃってたのを思い出します。←なんかちがう!?

なにはともあれ
人を愛するということ、自分という存在を見つめ直すこと、どうして自分はこの世に生をうけたのか、これから訪れる未来はどんなものなのか。
高校生なら、将来に漠然とした不安と憧れを抱きながら。
恋をしているなら、その切なさに身を切られるような思いで。
そして母となってからは、母としての気持ちで。
読み返すたびに、新たな発見をすることが出来る作品だと思います。

お時間のある時に、どうぞ「ぼく地球」ワールドにどっぷり浸ってみてくださいね。


【追記】
ただいま続編として別冊花とゆめで「ボクを包む月の光―ぼく地球次世代編」(白泉社)が連載中。3巻まで出ているようです。
こちらもぜひ読んでみたいんですが、なんか皆さんのレビューが辛口で…
とりあえず、連載終了したら挑戦してみたいと思います!

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