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山田ユギ『俺は悪くない』(芳文社文庫)

ユギ先生第二弾は、2006年11月発行「俺は悪くない」文庫版(芳文社)でいこうと思います。

1999年10月号~2000年9月号まで「花音」に連載し、全2巻で出版されていた「俺は悪くない」に『未収録作品&描き下ろしを34pプラス!』の豪華版!
これは単行本2冊を所有している人でも、そのエサにつられて食いついてしまいます。

俺は悪くない
弁護士の父親への建て前上法学部へ入学した梶俊明(かじとしあき)は、大学生活に目標を見出せないでいる。そんな中、なりゆきで入部させられた映画研究会にいた同じ1年の中村郁郎(なかむらいくろう)と出会う。普段はホラー映画馬鹿で素っ気ないメガネ青年中村が、時おり見せる梶への不自然な態度のわけはなんなのか…。
同じ映研には複数の男と金目当てでつき合い、AVにも出演する美形の鯨井純(くじらいじゅん)や、彼に執着する幼馴染の高崎豊(たかさきゆたか)、BL(というより○モ?)大好きな美樹先輩など個性的な先輩も勢ぞろい!

「映研を舞台に繰り広げられる切なく甘い青春グラフィティ完全版!」
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大学1年生ですよ!
まさに「青春」ですよ!!

進学してみたものの、自分が将来どんな職業についているのかなんて想像もできず、一人暮らしの慣れない新生活にドギマギし、高校の頃の子供っぽい恋愛とは違った、大人の恋愛に憧れる時期…。
梶と中村の1年コンビのウブな恋に、遠ざかった青春時代を思い出します。ふ。

若いからこそ一生懸命で、切なくて、苦しくて、いじらしい…。
中村→梶→鯨井→高崎の4人の気持ちのゆらぎが丁寧に描いてあって、ユギ先生の作り出す作品の世界にどっぷり浸かってしまいます。




ユギ作品の特徴はモノローグで表される登場人物の丁寧な心理描写と、絶妙な間合いのギャグ、そしてガッツリしたエロ!!
この「三位一体の魅力」に他なりません。

特にこの作品は梶と中村の気持ちの動きを丁寧に追うことで、鯨井と高崎の関係も浮き上がってきて、結局は二組の恋愛模様を描き出しています。

明るさを装いつつどこか影のある鯨井の二面性に興味をもち、関心を寄せる梶。そんな梶のことを、ある事柄をきっかけに入学当初から意識していた中村。でも、梶は中村のことを覚えていませんでした。

普段は根暗といえるほど大人しい中村。
でも、こと好きな映画のこととなると壊れた蛇口のようにその愛がほとばしります!!
本当はこんな風に情熱的なんだろうな~、と思えてほほえましい。
(っていうか同じオタクとして、あの感情のままに叫ぶ姿にすごく共感。)
梶に対する自分の感情をもてあましてはぐるぐる悩み、鯨井に対する梶の態度を見ては嫉妬したりと、ほんとかわいいヤツです。

梶はといえば、自分が男(鯨井)のことを意識したり、男(中村)が自分に気があるんじゃないかと気づいてもけっこうドーンと構えてて太っ腹。
でも、鯨井と高崎が相思相愛だったと知るや涙を流す純情派。
どこまでも素直で真っ直ぐな性格は、やはりボンボンならではです。

そして、キャラ的に一番の魅力があるのがやはり鯨井先輩。
目元の泣きボクロが艶っぽいッす~~♪
金目当てに男と付き合うのも、AVに出演するのも、全て母親の入院費用ためっていうんだから泣かせます。妾の子として苦労してきたせいか人の気持ちに敏感に寄り添ってくれる、見かけによらない「兄貴」キャラの持ち主。
ちゃらんぽらんで掴みどころのない態度の裏で、実は義理の弟である高崎を想ってその存在を遠ざけようとします。

高崎といえばでかい図体で着ぐるみ大好き、かわいいもの大好きな不思議キャラ。
でも、何も知らない子供のころからずっと鯨井を想い続け、真実を知ってからもその気持ちが揺らぐことはない純情一本やり
その強い気持ちを知って、兄弟ということにこだわり、かたくなに否定し続けた高崎をとうとう鯨井も受入れます。

結局鯨井と高崎の間に入れないことを思い知った梶は、学園祭の準備を通して自分に思いを寄せる中村のことを意識するようになります。
好きな映画のためには、なりふり構わず一生懸命な中村。
そんな中村に対して、いつしか友人以上の気持ちを抱くようになる梶。

怪我をした中村の変わりにカメラマンとして映画を撮りおえた時、梶は自分のやりたいことに出会えたと気づくと同時に、中村への自分の気持ちもはっきり自覚するのです。

その後はお約束のラブ全開モードに突入しますが、その時の中村がかわいいのなんの~~。
普段素っ気ない分、色気が増す…っていうか。
この辺「誰にも愛されない」(感想はこちら)の日下くんとキャラ被りますが。

でも、その様子を美樹先輩にしっかり記録されてた挙句に、学園祭で上映されちゃうなんて!!!
ギャーーーー!!!
これ以上のはありません!!!

でも、美樹先輩、憎めないから~~。
仕方なく許しちゃうっていうか~~~~。
みたいな。

なんだかリアクション全てが「腐女子」の代表!って感じですよね。
たはは~。

さて、あんなことがあって、その後梶と中村って学校はどうしたんだろうと思ってましたが、ちゃんと書き下ろしで描かれていてホッとしました。
やることも最後までやれてたし。笑

そして一度は結ばれつつも、その後別々に暮らしていた高崎と鯨井のその後も載っています。
「よかった、よかったよ~。二人とも~!」と喜ばしい展開なんですが、やはり連載当初から6年もたつと絵が…

違う!!

ユギさんの全ての作品を読んでいて、ずっと画風の変わらない作家さんだと思っていましたが、こうしてみるとやはり5年の歳月が確かに流れています。
なんだか都会的というか、全体に硬質な感じになってしまっていて、ユギ先生特有の肉体の生々しさも減ってるんですね~。
これは驚きの発見!!でした。←にぶすぎ?

そして、忘れてはいけません。
この作品で重要な役割を荷うのが、梶のかなり年下の従兄弟の誠の存在。
最初に「憧れのお兄ちゃん」だった梶の現在の姿(中村と出合って8年後)に失望しながらも、時間がたっても変わらない格好良さを梶に見出します。最後は「本当に変わらない大事なことは何か」を鯨井に伝えるキーマンでもあります。
少年が大人の事情を知り、かっこいいだけでない、現実を一生懸命に生きようとする姿に共感させるなんて…ユギ先生の演出にやられました。

恥ずかしいけど輝かしい青春時代を思い起こさせてくれるこの作品。
二組のカップルに幸多かれ!!と叫ばずにはいられません。


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